第十四話 小さな終わり
バットを落としてからそう時間はかからなかった。
謎の生物の呻き声の中から聞こえる僅かな音を綺は聞き分け、美香子を引き連れ従業員部屋に入った。
シャッターのスイッチを必死に探していたところ、美香子が見つけて綺に教えた。
シャッターのスイッチを押す。
シャッターがいきなり閉まりだし、永介たちは驚いたようにシャッターの方向を見る。その瞬間、
晃は永介と怜のパイプを盗み取った。
パイプを盗まれたことに気づいた永介と怜は晃からパイプを取り戻そうとするが、シャッターはすでに晃が手を上げたら届く位置にあった。
晃は力を込めてシャッターを下まで下した。
中から声が聞こえる。
「晃ぅぅぅぅ!!! 開けろぉぉぉぉぉぉ!!!!! 」
逃げ道と武器を失った三人がシャッターを叩く。
綺と美香子が従業員部屋に入り、二人の姿が見えなくなった謎の生物たちは、泣き叫ぶ三人をロックオンした。
なん十体の謎の生物が三人へにじみ寄る。
必死に抵抗しようと、テーブルの上に置いてあるもので対抗しようと手に取るが、持ち上がらない。
よく見ると、箸入れや調味料、メニューなどが接着剤のようなものでテーブルにぴったりとくっついていた。
三人の悲鳴がだんだんと聞こえなくなっていく。
シャッターを開けると謎の生物たちが三人の上に馬乗りとなり、肉を喰らっていた。
「………僕は強いから生きている。お前らからしたら当然だろ?」
三人の屍に話しかける。
当然返答は無かった。
晃は一体ずつ謎の生物を屠っていった。
念のためにと三人の屍の頭部も破壊した。
溜まった鬱憤を爆発させる勢いで叩き、つい跡形もなくつぶしてしまった。
店内に謎の生物がいないのを確認し、従業員部屋をノックする。
「おーい、生きてる? 」
晃が言うと鍵が開いて中から綺と美香子が出てくる。
「………作戦成功………? 」
「そうだと思うよ」
そういうと綺たちは一気に力が抜けてへなへなと床に座った。
「ここで休んだら食べられちゃうし、コンビニに戻ろう」
「そ、そうね~」
美香子の手を引き、店を後にする。
「そういえば、閉じ込めたときあいつら持ち上げられないい! なんて喚いてたけどなんか知ってますか? 」
「あらあら~上手くいったみたいねぇ~」
美香子はクスクスと笑う。
「コンビニから瞬間接着剤を拝借してくっつけてたのよ~。少量でもよくくっつくから便利だったわ~」
あの時一人で扉の外に出てたのはそういうことだったのか。
晃は少し感心した。
「………お」
綺が少し震えている。
「どうした綺? 」
「お………お………」
まさか感染したんじゃないかと思い、バットを構えようとする。
「お腹空いたぁぁぁぁ!!!!! 」
次の瞬間綺のお腹から物凄い音が出る。
晃は呆れ美香子は笑う。
晃はツッコミ代わりに綺の頭を軽くバットでこつんと叩く。
地味な痛さだったようで綺はその場でううと言いながら頭を押さえてかがみこむ。
「い、いきなり何すんのさ! あんた! 」
「紛らわしい事すんな!」
涙目の綺に晃が注意する。次の瞬間、またお腹の音がする。
「また鳴ったし」
「え? 私じゃないよ?」
晃はハッとし、美香子の方を向く。
美香子は両手でお腹を押さえている。
「お腹空いてきたわね~」
一時期、その場は笑いで包まれた。