第十話 真相
「晃、一緒に来い」
パイプを持った永介が呼びかける。
「……今から食料を調達してくる。このコンビニ以外からな」
「え、なんでわざわざ……」
「晃」
そこで晃は察した。さっき言いそびれた『作戦』のことだと。食料調達というのは、綺たちに不審に思われないように嘘をついていると。
晃はバットを取り出し、三人の後についていった。
「いってらっしゃ~い」
美香子が手を振る。
ゆなが喰われたという事実を目の当たりにして、寝る前よりも顔に血の気が無いように見えた。
一方綺は、体育座りのままずっとうずくまっている。
入ったところは駅の中にある飲食店。
怜がスイッチを探し、飲食店のシャッターを閉め、電気を付けた。
「コンビニもシャッター閉めれば良かったですね。そうすれば休憩室に閉じこもる必要無いし……」
「そうだね」
三人は真顔のままだった。
「それじゃあ話すぞ」
「作戦っていうのは、題して、《生存率を上げる大作戦》だよー」
「そんな作戦名つけた覚えないぞ」
丈弥に対して怜が言う。
「その内容だ」
永介が話し始める。
「生存率を上げる、《俺達だけでも助かる》といった方がいいかもな」
「俺達だけでも……? 」
晃には嫌な予感しかなかった。
「まず奴らと戦う戦力のない人間を一人用意する」
「武器を持ってない人間ってことだよー」
「そしてその後ろに俺たちがついていく。そして脱出口のありかを探すんだ」
「我らが永介君が言ったんだよー。『きっと謎の生物が大量発生しているところに脱出口があるはず』ってねー」
「奴らがいないところは全て周ったが、脱出口が無かったからだ」
「そして奴らが大量発生しているところに、戦力のない人間を送る」
「そして結果を報告するんだ」
「例えあいつらに喰われてる途中でも、『脱出口はありませーん』ってね」
「ちょ、ちょっと待ってください。武器を持ってる人がいるならその人が行けばいいじゃないですか。ただでさえあいつらを減らしておいた方がいいだろうし…」
「最初に言っただろ?『俺達だけでも助かる』って」
「武器はあくまで自分だけを守る護身用だよー。誰だって自分が一番可愛いし大事でしょ?」
晃が寝る前に聞いた言葉と同じことを言う。
晃は無意識に握りこぶしを作っていた。
「今この状況になって戦えない奴は論外だ。例え女であっても、バック振り回せば武器になるってのに怖気づいてビビッて逃げやがるんだよ」
「……今話した内容を踏まえて次の話を聞いてくれ」
「ゆなちゃんのことだよー」
「まず俺がゆなを起こし、『お母さんを見つけた』と扉の外へ連れ出す。そしたらさっきの作戦通りにやった」
「ゆなちゃん叫んでたよー。『こっちにはひじょーぐちもおかーさんもいない!! たすけてぇぇぇー! おかぁぁぁさぁぁぁん!!! 』って、あいつらに喰われながらね」
晃はとっくに三人に嫌気がさしていた。寝る前に丈弥が怜に朴念仁と言っていたが、よっぽどこの三人の方が朴念仁である。
「ちょっと質問していいですか? 」
「ん? 」
「このことを綺たちの前で話さないってことは…綺たちをその作戦の犠牲にする、ってことだからですか?」
「……お前が知って何になるんだ?」
「質問に質問で返さないでください。僕は答えを求めてるんです」
晃は強気に出た。
「そうするつもりだよ」
質問の答えは意外とあっさり帰ってきた。
「……あっそうだ。このこと知っちゃったからには、俺たちの仲間にならないー? 」
「へ? 」
予想外の言葉に目が点になる。
「おい丈弥」
「いいじゃーん。ほら晃武器持ってるしさー、戦力外ではないんじゃないのー?」
絶好の復讐のチャンスだ。
ここで仲間のふりをして、綺たちを助ける……。そして、ゆなちゃんの敵を…。
「……その作戦、のります。僕を……仲間にしてください」
晃は今すぐにでもこのことを綺たちに話したいという衝動に駆られた。
語彙力がなくて意味わかんねぇよと思っているそこのあなた!
分かりづらくて申し訳ありません!!
簡単に言うと永介たちが言っていることは
「他人とかどうでもいいから自分だけでも生きよう!」
ってことです。