第九話 悲劇
「いなかった……? 」
妙に晃はその言葉に謎の違和感を覚えた。
「どっか行ってるのかな? 」
「うーん、こんな状況でゆなちゃんを連れて散歩とは考えにくいしね~」
「……」
眠りにつくまえに聞いた三人の会話、それと関連性があるのか晃は考えていた。
「晃? 」
「え? な、何? 」
「どうしたの? 起きてからなんか様子おかしくない? 」
「いやぁ……その、寝た時間がいつもより遅かったから寝不足気味でボーっとしちゃって…」
そんな会話をしていると、扉が開き永介、丈弥、怜の三人が入ってきた。
ゆなの姿は無かった。
「おかえりなさい~。あら~? ゆなちゃんは~? 」
「美香子さん……それが……」
永介が話し出した。
朝の五時ぐらい、ゆなが突然起きだし丈弥を起こした。
そして「お母さんの声がした」と言い扉の外へ出ようとした。
丈弥が永介と怜を起こし、三人でゆなの後を追った。
後を追っている最中にゆなを見失った。が、そんなときに悲鳴が聞こえた。ゆなの悲鳴だった。
声が聞こえた方向へ向かうとゆなは、
謎の生物に喰われていた。
女の面影が見える謎の生物、もしかしたらゆなの母親なのではと思いつつ、ゆなをなんとか救い出そうとゆなを襲う謎の生物に鉄のパイプを振り下ろす。
しかし、時すでに遅し。
ゆなの肌は浸食されていくかのように謎の生物と同じ色に変わっていく。
「俺達がもっと早く対応していれば良かったものの、間に合わなかったんだ」
「俺があの時止めてれば……」
丈弥が握りこぶしをつくる。
「それに対しては結果論だから何も言えないが、今こうして命が失われたことは、紛れもない事実、現実だ」
場が静まり返る。
「ちょ、ちょっとお水飲んでくるわ~……」
「あ、私も……」
美香子と綺は水を飲みに行った。
「……あの」
「ん? 」
「作戦って……なんですか?」
「……何のこと? 」
「いや、詳細までは聞こえなかったんですけど、夜トイレに行った帰りに聞こえてきて…」
一瞬三人の顔がこっちを睨んだように見えた。
「詳細は聞いてないだと? 」
「眠くなって寝てしまったもんで」
「…ちょっと待て」
三人が晃に背を向け少し会話をしている。
数秒後、三人の会話が終わり、晃の方へ振り向いた。
「晃」
「は、はい」
「お前口が堅い方か? 」
「まぁあんまりべらべら話すことは無いです」
「……なら良いか」
「なら約束しろ。このことを綺と美香子には絶対に口が裂けても話すな。良いか? 」
あまりの圧迫感で、唾を飲まずにはいられなかった。
その時、綺と美香子が帰ってきた。
「……後で話す」
晃の耳元で怜が囁いた。
「なんの話してたの? 」
「んーなんでもないよ」
「ならいいや」
綺との会話が始まった。