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ある日龍姫になった滅龍者と武の頂を目指す槍使い  作者: 槻白倫
第3章 白の少女と滅龍者と信龍教会
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015 幕間 ■■■■■■の手記、及び連絡

 アルクが負けた。その負けは目に見えていた事だ。


まだだ。滅龍十二使徒(アポストル)と戦うにはまだ早い。それも、六より上なんて最悪だ。


 今回ももう駄目だろう。巡り合わせが悪かった。


 その活躍に目覚ましいものはあった。片鱗すら感じる事が出来た。けれどそれまでだ。


 武神には届かない。慈愛に勝つ事も出来ない。未来視にも転移にも勝てない。


 一番下であるノインにすら勝てなかったのだ。結果は見えている。


 今回は順序が大きく違った。こんなに早く滅龍十二使徒(アポストル)と戦うとは思わなかった。


 ノインは良い。ノインとはあそこで当たる運命だ。けれど、それ以降は違う。巡り合わせが悪いだなんてものじゃない。最悪も良いところだ。


 だから、これで終わりだろう。


 ナホも奪われ、アルクも大怪我を負って、クルドの一矢も戦意喪失。もう、無理だ。


 今回はこれでお終い。ナホは殺され、アルクは失意に沈む。


 僅かに残った勝ち筋だって、きっと掴めやしないだろう。掴む事なんて、出来やしないだろう。


 壁を超える事だって出来ない。己を超える事だって出来ない。武神の域に至る事も、また出来ないだろう。





 白亜に染まった城。その玉座の間にて、一人溜息を吐く。


「もう無理ですね。戻ってきて良いですよ」


 空気を震わすのは静かな、けれど美しい声音。


 聞けばその声に自然と従いたくなるような、そんな心を優しく包み込まれるような音。


 万人は頭を垂れ、英雄は(かしず)き、男は全てを差し出し、女は自身との差に諦観をする。


 そんな、絶対強者の声。


 誰も逆らえないその声に、しかし否とその者は答える。


「……何故です? 貴方も、私を裏切るのですか?」


 苛立ちの色が少しだけ混じった声。しかし、その声にも否と答える。


「……なら、好きにしなさい。必要であれば、手の内も明かしなさい。ただし、誰のためでも無く、自分のためだけに。貴方は貴方の辿った道だけを行きなさい。良いですね?」


 その声には素直に頷いた。


 もとより逆らう事は考えていない。しかし、具申するくらいには己は持っている。


 それを、自分が良く知っている。


「頑固者……」


 呆れたように呟かれる。


「まぁ、良いでしょう。万に一……いえ、億に一にも無い可能性ですが、賭けましょう」


 その賭けの無意味さを知っている。もう痛みなど忘れる程に痛感している。


「刻限までもう僅か……どちらかの死を持って終わりにしましょう」


 静かに、冷酷に、そう告げる。


 刻限は、運命の分水嶺は、もうすぐそこまで迫っていた。


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