準備万端! いざ来世!!
今回は2話更新です。
前話からどうぞ。
ひとしきり全身で喜びを表現した後、「転生者の秘石」を首から下げ、重たい体を引きずってベッドに向かう。
ここのところやたら体調が悪い。連日の作業の疲れがいまだに抜けていないらしい。
前はこのぐらいでへばることもなかったんだが……。まぁこの不便な体とももうすぐおさらばだ。
ベッドに腰かけてあらかじめ用意しておいた自殺用の薬と水を飲む。
眠るように死ねるとの触れ込みだったが、今のところ異常はない。
実際死んだことのある人間の感想じゃないんだから実は安らかなように見えて、激痛で意識を失っているだけとかもあり得る。やだなぁ、最後ぐらい安らかに死にたい。
そんなことをぼんやりとした頭で考えながら通信端末を手に取る。最後の仕上げだ。
『いい酒が手に入った。取りに来い。』
鍛冶屋のアイツに短いメールを打つ。酒好きなドワーフのアイツことだ。明日か明後日にはうちに来て自分の死体を見つけてくれる。
アイツの仕事場から家までの距離を考えればこれからすぐに来たとして、曲がり間違っても救命処置が間に合うことはないだろう。
ベッドに横になると急激な眠気が襲ってくる。
「来世はまともな体でありますように」
祈るようにつぶやいて思いとどまる。神ってのはたぶん前世で死んだ後に会ったアレのことだ。
お願いしても聞いてくれそうもない。なんか性格悪そうだったしなアレ。
人生最後のため息をつき、眠気に身をゆだねて瞼を閉じた。
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音もない真っ白な空間で金髪の青年はしゃがみ込むと足元で弱弱しく明滅する光を拾い上げる。
「転生させてもダメだったか。それにしてもとんでもないことをする。」
拾い上げた光を覆うように手をかぶせると、不安定だった光は徐々に強くなっていく。
強い光を放つようになったのを確認し、青年は光を宙に離す。
光はフワフワと漂いながら青年から遠く離れていく。
「こちらはこれで大丈夫。さて、あちらはどうなるか……」
青年はそう言って振り向き視線を下げる。そこには黒くうごめく何かを纏い、輝きを赤黒く染めていく光があった。
これにて序章終了となります。
次回から本編の始まりです。