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転生者の秘石

あと一話で序章が終わるといったな……。

アレは嘘だ!!

加工機械から流れる電子音がセットされた真龍石の解析が終わったことを告げる。


「不純物0.01%以下、魔力親和性は予定値の130%……」


コンソールに表示された分析値を読み上げる。

これならイケる! これでダメならもうほかに手はないと言っても過言ではないほどの上質な素材だ。


震える手で加工機械を操作し、加工開始のスイッチを入れる。


球体だった真龍石は次々と薄くスライスされていき深紅の薄板が量産されていく。

ベルトコンベアで別の機械へと流れていき、その上をカッターが付いたアームが縦横無尽に動き回る。

最後に上からプレスされ、型抜きのように綺麗に紋章だけになった深紅の薄板が出てきた。


薄板に手をかざして魔力を込める。 

スルスルと魔力が浸透し始めるがすぐに引っ掛かりを感じやがてそれは強固な抵抗になった。

無理に抵抗を破ろうとせず、じっくりじわじわと魔力をかける。

最初に注いだ魔力の3倍ほど魔力をかけたところで一気に抵抗がなくなった。

それどころか逆に体からズルズルと魔力が引きずり出されていく。

何とか抑え込み術式全体に魔力をいきわたらせていくと数分で術式全体が青白く輝いた。


これでようやく一枚。

出来上がった薄板を慎重に持ち上げ、すぐ隣の機械に乗せ。目の前に運ばれてきた次の術式へと魔力を込めていく。

魔力が尽きたら眠り、食事をしてから作業をする。魔力が尽きたらまた眠る。

昼も夜もなくひたすらそんな作業を繰り返して3日目の朝。


目の前にひと際緻密で入り組んだ術式が配置される。

ついに転生のための中核部分となる「転生」が刻まれた薄板が来たか。


組み込まれている術式は「同調」と「転生」の二つだけだがどちらも超高難度術式だ。「同調」ですら世界で使えるのは片手で足りる程だろう。


小さく深呼吸して気を引き締め、術式に魔力を注ぐ。

いつも通り抵抗を超えた瞬間、体から一気に魔力が吸い上げられる。

魔力を搾り取られて起きる眩暈と闘いながらひたすら魔力を注ぎ続ける。


ここでしくじったらすべてが水の泡だ!


自分を奮い立たせて途切れそうになる意識を無理やりつなぐ。


まだ……まだだ! 


歯が欠けるほど食いしばって魔力を振り絞る。

最後とばかりに絞りだした魔力を注ぎ込んだ瞬間、術式が青く光り世界が暗転した。







さっきまで椅子に座っていたはずが気が付くと床をなめていた。

魔力は完全に戻っているがやたら節々が痛い。どうやら丸一日気を失っていたらしい。


鉛のように重たい体を無理あり立ち上がらせ、椅子に腰かけて作業を再開する。


黙々と作業を続けること三日間、ついにすべての術式が完成した。

完成した術式は次々と別の機械の上で神鉄(オリハルコン)でコーティングされ鬱金の輝きに包まれていく。


装飾に使うからくれといったら鍛冶屋のやつ特に詮索もせずにすんなり渡しやがった。

これなら最初から頼めば……。いや真龍石を見た後ではとてもではないが高純度聖銀(ミスリル)神鉄(オリハルコン)ぐらいでは満足できない。きっとこれでよかったのだ。魔力切れでやたら疲れたけど。


コーティングが終わり冷却された術式たちは、切り出した元の板にはめ込まれて接着剤代わりに真龍の血を塗られて積み上げられていく。


元の球形に戻ったところで最初の解析時に取ったデータをもとに作られた型に嵌められ、全方位から圧力をかけられる。


あとは血がなじんで元通り1つの結晶に戻るのを待つだけだ。そこまでおよそ3週間。

あとのことを考えて身辺整理でもしておこう。






3週間はあっという間に過ぎた。

真龍石をはめ込む転生用魔道具の台座作成。不要なものの処分に、世界に多大な影響を及ぼしそうな高位術式関する研究資料の破棄、迷惑をかけるであろう知り合いたちへの置き土産の準備、遺産関係の法的書類の準備etc.


あとは真龍石の完成を待つだけ、という状況で作業完了を知らせる電子音が鳴り響き、

圧力が解放されるプシーッという音が続く。


作業用の手袋をして完成した真龍石を手に取る。

深紅の海に淡く輝く星のような術式が浮かんでいる。見惚れるほどに美しかった。


いつまでも眺めていたい未練を断ち切り、用意していた台座に真龍石をはめ込むと鑑定用の眼鏡をかける。





転生者の秘石


使用者:未設定


材質:真龍石、聖銀(ミスリル)


付与:「強化」「生命」「開花」「変異」「成長」「保護」「修復」「隠蔽」「帰属」「転移」「結界」「四元」「四変」「二天」「退魔」「増魔」「時空」「投影」「転写」「制御」「魂魄」「根源」「神秘」「同調」「精神」「継承」「転生」



真龍石でできた生命の宝珠。使用者の魂を来世に導く。生命を維持し成長を促進させ、生まれ変わった肉体が生前の記憶を引き継ぐのに耐えられる状態になると記憶の継承が発動する。火・水・地・風・氷・木・雷・無・光・闇・聖の属性効果から使用者を守り。非実体からの干渉を防ぐ。使用者及び任意対象への魔法効果の打ち消しや防御障壁の展開が可能。身体・精神系状態異常回復力を大幅に強化する。


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「っしゃぁぁ! キタぁぁぁぁぁぁぁ!!」


思わず家中に響くほどの歓声を上げて大きくガッツポーズをする。



長くなりすぎて1話で収まらず分割することに、

嘘ついてすいませんでした。



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