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血塗られた剣は救いの剣  作者: リュミエール
第2章 養分となる人々
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第6話 王国の企み

 俺はセカイを連れて、世界中を適当に歩き回る旅を続けていた。

 逃亡ではなく旅と表現しているのは、俺を追ってくるやつは大体賞金手に入れて楽して過ごそうとしているやつが多く、実際は賞金首の称号は別にお荷物だと感じたことはない。

 正直お荷物になっているのは極悪人の称号の方だ。

 それのせいでグランのような正義を押し付けてくるやつが沸いてきて、しかもそいつらがわりと強い。

 世界は広いから見つかることはないと思っていると、先日のようにグランに遭遇したりする。

 人数は少ないものの、出くわすと厄介なので見つからないようにはしているのだが、これがまた難しい話なのだ。

 まあそれは、悪人の道を進むと決めたときからの定めなんだろうけどな。

 日が暮れて野宿の準備を進めていると、食料が残り少ないことに気づく。

「うーん…これは明日にでも街から食料買ってきた方がいいな…」

「また泥棒するの?」

「盗んでねえよ。金はちゃんと置いていってる」

「でもやってることは、泥棒と変わらない」

「くっ…」

 痛いところをついてくるな…

「だけど、それは街の連中が俺を客として扱えばそんなことする必要はないわけで…」

「それは無理だよ」

 なんだろう…こいつ、いつもより辛辣な気がする。

「まあ、この辺りには街があったはずだし、そこで調達すればいいだろう」

 俺はそう言って、さっさと調理を開始する。

 

 

 

 翌日の夕日が昇る頃。俺たちは街を見つけた。

「何とか間に合ったな」

 俺はセカイの方を見てこう言った。

「俺はこれから街に潜り込んでくる。お前はこの辺の安全なところで待っててくれ」

「わかった」

 俺はセカイを残し、街に向かった。

 街の中の様子を伺ってみると、そこには人っ子一人、誰もいなかった。

「どうなってんだ?」

 俺は警戒しながら街の中に入っていく。

 白い建物のみがそびえ立つこの街は、人の気配をまるで感じず、不気味な雰囲気が漂う。

 このまま先に進んでいると、背後から金属同士がぶつかり合う音がこちらに近づいてきた。

 振り向いてみると、そこには鎧と兜を身に纏った騎士達が数人、こちらに向かって走っていた。

「貴様!この街の者か!」

 こいつらは最高賞金首の顔も覚えられないのかよ…

「違うよ。俺はたまたまこの街に来ただけだよ」

「ふん、信用ならんな。まあどちらにしろ、お前は司令官のもとに送りつけるわけだからな」

「なるほど。この街の住民がいないのは、王国の仕業だってことか…」

 まったく。いつも王国の連中は胸糞悪いことばっかやりやがって…

「抵抗しなければ、痛い思いをしなくて済むぞ?さあどうする」

 騎士達は腰に差した剣を抜き、脅すようにそう言った。

「へ、王国が関わってんなら、答えは一つだ」

 俺も剣を抜き、騎士達に斬りかかる。

「なっ!?」

「貴様!抵抗する気か!?」

「当たり前だろ!」

「ぐあ!?」

 俺は手前にいた騎士の右肩を鎧ごと切り裂き、切り口から血が吹き出す。

「ぐう…」

 俺に斬られた騎士は地に膝をつき、右肩を抑えている。

「大丈夫か!?」

「貴様…許さんぞ!」

 傷ついた騎士を一人が手当てし、残った数人の騎士が俺を襲う。

 俺は剣に秘められたマナを解放し、辺り一帯を灼熱の炎が覆う。

「ぐああ!?」

「あ、熱…助け…」

 騎士達は次々に倒れていき、炎に巻き込まれたやつら全員が倒れたところで炎のマナを剣に戻す。

 すると炎は俺の剣が吸収していき、辺りは焦げて黒くなっていた。

 俺は炎の被害から免れた、傷ついた騎士の近くにいたやつに歩み寄り、尋ねた。

「お前達はこの街の住民をどうした?何を企んでる?」

「ぜ、絶対に言うものか!」

「それならまたさっきの炎を出さざるを得ないな…」

 俺は騎士に背を向けて、剣をかざす。

 すると騎士は慌てたような声で俺に言った。

「ま、待て!それだけはやめろ!」

 俺は剣を降ろし、騎士の方を見てこう言った。

「じゃあ話してくれねえかな?情報と仲間の命、どっちをとる?」

「この…悪魔め!」

「悪魔で結構。それで、どうすんの?話すのか話さないのか」

「……わかった、話す」

 騎士は観念したように座り込み、俺もその場であぐらをかく。

「司令官は、住民を世界樹の養分にすると言っていた」

「世界樹の養分だと?」

 世界樹とは、世界のマナを貯蔵する樹のことだ。

 この世界の大地や自然はマナによって生きており、そのマナがなくなると世界樹は枯れ、世界はやがて死に絶えてしまう。

「世界樹のマナは、ここ数日で大きく減少している。それで思いついたのが、人のマナを世界樹に送り込むということだ」

 俺はその発言に苛立ち、騎士を睨みながら言った。

「お前さっき、俺のこと悪魔って言ったが、そんなことに加担するお前の方がよっぽど悪魔だぞ」

「仕方なかったんだ!私の家族を救うためには、これしか…」

 俺は舌打ちをして、剣を納める。

「おい、司令官は世界樹に向かったのか?」

「ああ。世界樹の根元なら、住民のマナを送れるだろうって」

 ここから世界樹に向かうとなると、早くて十日ってところか。

 こうしちゃいられねえ!早く向かわないと!

 俺は一度セカイと合流するために、街を飛び出す。

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