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血塗られた剣は救いの剣  作者: リュミエール
第1章 相対する二人
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第4話 殺人鬼

 俺が目を覚ますと、すでに夜中になっており、セカイは俺に体重を預けるように眠っていた。

 こいつ、結局寝ちまったのか…

 まあ別になにか盗られたわけでもないし、問題ないか。

 俺はセカイの寝顔を覗き込む。

 こいつ、いつも無表情でなに考えてるかわからないが、寝顔は結構可愛いな…

 それにしても、さっきの夢はなんだったんだろうか…夢にしては、なんだか記憶が鮮明としてるというか、なんというか…

「ブラド?どうしたの?」

 セカイが目を覚ましたようで、目を擦りながら尋ねた。

「いや、変な夢を見ただけだ。それよりお前、いつから寝てたんだ?」

「……ご飯食べ終わって、その後すぐの記憶がないからたぶんそのくらいに寝たんだと思う」

 つまり俺が寝たのとほとんど同じタイミングで寝たのかよ…一応見張っててくれって頼んだのに…

「お前って、本当に能天気だよな…頼み事忘れて寝ちまうなんて…」

「そうかな?食べたら眠くなるのは普通だと思うけど…」

「いや、そういうことじゃないんだが…まあいいか」

 俺は若干投げやり気味に会話を終わらせると、村から煙がたっていることに気づく。

「ん?もしかして、あれって火事か?」

「違う。入り口のところ、よく見て」

 セカイはそう言って指を差し、俺はその方角を見る。

 そこには野党と思われる集団が立っていて、次々と村の中に入っていく。

「ちっ!セカイ、行くぞ!お前は怪我人治すの手伝え!」

「わかった」

 俺たちは急いで村に向かって走り出す。

 俺たちの姿を視認した手下たちが、他のやつらにそのことを伝え始める。

「おい!誰か来たぞ!」

 俺は野党の前に立つと足を止めて、剣を抜く。

 セカイも俺が足を止めたのを見て、足を止めた。

「おいおい、なんだお前は。お前もこの村のやつか?」

「へえ…この世界の人間でも、俺のこと知らないやつがいるのか…」

「ああ!?お前のことなんて誰も知らねえよ!おい、こいつらやっちまおうぜ!」

「「おお!」」

 野党たちは一斉に俺たちに襲いかかってくる。

「セカイ、お前は手を出すな。こいつらは、俺が殺す…!」

 俺がそう言うと、セカイはコクりと頷いた。

 俺は最初に前に来たやつの腕を斬り落とすと、俺は返り血を浴び、斬られた野党は悲鳴を上げて叫び出し、他のやつらは動きを止める。

「ひっ!?が、ああぁぁああぁ!!」

 切り口からは血液が溢れ、次第に顔が青くなっていく。

 俺は剣についた血を、剣を振る勢いで吹き飛ばし、野党たちを睨む。

「次は、誰の番だ」

 野党たちは恐怖で顔がひきつり、汗をかいて震え出す。

「う、うわああぁあぁ!」

「あ、悪魔だ!逃げろぉ!」

 野党たちは恐怖で村の中に逃げ込む。

 あいつら、よりによって村の中に逃げやがるか。

 俺は急いで村の中に入り、セカイもその後を追う。

 村の中は酷い有り様で、たくさんの村人の死骸がゴロゴロと転がっていた。

「セカイ、生きてるやつは魔法で治してやれ。俺は野党どもを追い払う!」

 俺はそう言って、セカイの反応を確認せずに、野党を追った。

「お前たち!カリンを離せ!」

 すると、グランの声がハッキリと聞こえた。

 俺は声のした方に向かうと、広場で野党の集団とグランが対峙しており、カリンが泣きながら人質にされていた。

「おいグラン!なにしてんだお前は!」

「ブラド!?どうしてここに?」

「こんな騒ぎ、見たらすぐにわかるだろ!お前は怪我人見つけてセカイのところにでも運んでろ!こいつらは俺が相手する!」

「だ、だが、カリンが人質にされているんだぞ!」

「そうだぞ小僧。人質がいる以上、お前らは俺たちになぶり殺されるだけだ…」

 俺たちの会話に、妙に貫禄のある男が割り込んできた。

「お前が親玉か。その様子だと、お前も俺のこと知らないらしいな」

「お前のことなんて知らないな。それより、二人とも動けばこのガキの命はないぞ」

 親玉はカリンの首に刀を近づける。

 その様子を見て、俺はクスリと笑う。

 それが不愉快に感じたのか、親玉の顔が険しくなる。

「なにがおかしいんだ、小僧。このガキがどうなってもいいのか?」

 親玉の刀はカリンの首に触れ、僅かに血が出る。

 優位に立っていると勘違いしている野党どもに、俺はこう言った。

「一つ教えてやる。そいつ、自殺志願者だぜ?」

「なに?」

 野党は、俺の言葉を聞いてゲラゲラと笑い出す。

「ははは!そんな嘘で俺がガキを手放すと思ったか!甘いんだよ!」

「甘いのは、どっちかな?」

 俺は腰の銃を取り出し、親玉の肩を銃弾が貫く。

「ぐっ!?」

「親方!?」

 親玉は撃たれた部分を手で抑え、周りの手下たちはそいつのもとに集まる。

「きさま!ガキがどうなってもいいというのか!?」

「……お前ら、本当に俺のこと正体に気づいてねえのな」

 俺は怯んでいる野党どもに、自己紹介をする。

「俺の名前はブラド。こういえば、だいたい伝わるだろ?」

「ブ、ブラドだと!?な、なぜこんなところに!」

 親玉を含み、野党全員が動揺していた。

「この村の近くにいたのは偶然だ。ただ、これでわかったろ?俺に人質は無力だってな」

 俺はそういいながら野党に歩み寄ると、親玉は突然土下座をし始める。

「わ、悪かった!もう悪いことはしないから…だから、許してくれえ!」

 俺は土下座する親玉の前に立つと、剣をゆっくりと上げる。

「お、おい!何をする気だブラド!」

 俺はグランの質問を無視し、剣を親方目掛けて振り下ろす。

「ごは…!」

 俺の振り下ろした剣は親玉の背中を斬り裂き、再び剣が血で染まった。

「お、親方!」

「あ、悪魔だ…」

「に、逃げろ!殺されるぞ!」

 親玉の死を目の前で目撃した手下たちは、俺を悪魔と呼んで逃げ惑う。

「逃がさねえよ…てめえら全員ここで殺す…!」

 俺は野党どもを追おうとすると、親玉が俺の足首を掴んで阻止する。

「行かせんぞ…あいつらは、絶対に…」

「……死ね」

 俺はそう言うと、親玉の心臓を剣で貫き、俺の足首を掴む手の力が弱まり、野党の捜索に戻ろうとする。

「待て!ブラド!」

 すると今度はグランが俺を止める。

「なぜ殺した…相手は命乞いをしてたんだぞ!なのになぜ!」

「……てめえは甘すぎんだよ」

 俺はそう言い残して、野党の捜索に戻る。

 

 

 

「がは…!」

 俺は野党の心臓を剣で貫き、力が抜けたタイミングで剣を引き抜く。

「これで全員か…」

 俺は剣についた血を、剣を振る勢いで吹き飛ばし、鞘に納める。

「う…う…」

 泣き声が聞こえ、その方を見るとカリンが膝をついて泣いていた。

「大丈夫か?カリン」

 俺が肩をポンと叩くと、カリンは泣き顔を見せ、血まみれの俺にしがみつく。

「どうした?」

「お願い…もう…私を殺してよ…」

 カリンは震えた声でそう言った。

「もうやだよ…人が死ぬのを見るのは…こんなに…辛い思いをするのは…」

「……わかったよ。ほら、目を閉じろ」

 俺がそう言うと、カリンは目を閉じ、俺は彼女の首元に剣の刃を近づける。

「せめて、お前のことは忘れずにいてやるよ」

 俺は剣を振り上げ、そのままカリンの首をはねようと───

「待て!ブラド!」

 ───したところでグランが割り込んできた。

 その横には、セカイもいた。

「カリンを殺すのは、間違ってる。この子がなぜ死ななければならない。罪もない子が死ななきゃいけない世の中なんて、間違ってるだろ!」

「こいつは選んだんだよ。生きることより、死ぬことを…俺はその意思を尊重してるだけだ」

「お前はどうしてすぐに諦めるんだ!足掻けばなんとかなるかもしれないのに!どうしてだ!」

「……てめえのしてることは、全部自己満足なんだよ」

 グランの言葉を聞いて頭にきた俺はそう言った。

「じ、自己満足だと!?俺のどこが自己満足だと言うんだ!」

「全部だよ!お前、前に言ったよな?生きてれば希望はあるって。この惨状を見てみろ!カリンは少し前に魔物に親を殺されて、立ち寄った村も野党に襲われてんだぞ!これを見ても、カリンが希望を見出だせると思ってんのか!」

「だ、だが…俺はそれでも救われた!きっとみんなだって!」

「みんながみんな、希望を持って生きてはいけねえんだよ!死ぬほど苦しい想いをしたやつに、それでも生きろってか?それは救いじゃねえ!そんなのは拷問となにも変わらねえんだよ!」

 俺はカリンの方を向き、目の前に立つ。

「やめろ!なにも殺さなくても、幸せに生きる道がきっとあるはずだ!だから…」

 俺は剣を上にあげて、呟いた。

「てめえは、中途半端に甘すぎるんだよ…」

 俺は剣を振り降ろし、カリンの首が宙に浮いた。

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