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血塗られた剣は救いの剣  作者: リュミエール
第1章 相対する二人
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第1話 心なき少女

「ふわあ…よく寝た…」

 俺は街の下水道で目を覚ます。

 生臭い下水道で寝ることに最初は抵抗があったが、長いこと続けているせいか最近慣れてきた。

「ったく…宿に泊まれればこんなことしなくても済むのによ…賞金首になっちまったせいで寝る場所探すのも一苦労だぜ」

 ま、それに関しちゃ人殺しである俺のことを放っておくことは出来ないのはわかるんだけどな。

「さてと、こんなところからさっさと出て、買い物済ませちまうか」

 俺はそう言ってはしごを登り、蓋を開けて地上に出る。

 街は真っ暗で、部屋の明かりもついてる部屋はほとんどない。

「よし、今なら大丈夫そうだな」

 俺は人に見つからないように周りに意識を集中させながら商店エリアに向かった。

 人に見つかることなく商店エリアにたどり着いた俺は、早速店の商品を手に掴み、袋に入れる。

「最近はろくなもん食ってなかったから、しばらくはまともな飯が食えそうだ」

 俺は10日分程の食料を袋に積めた後、その分の料金をその辺に置いておく。

 俺がこんな風にコソ泥のような真似をするのは、顔を見られると追われるからであって、決して盗むためではない。俺がやるのは殺しだけだ。

 俺は袋を持って街から出ようとしたとき、誰かにぶつかった。

「あっ」

 俺にぶつかり、倒れたのは緑色の髪をした少女だった。

「っと、大丈夫か?」

 俺は少女に手を差し出し、少女はその手をとって立ち上がる。

 少女の目は死んでいて、完全な無表情で生気を感じられない少女は、俺の方をじっと見る。

 やべっ。俺のこと、バレたか?

 俺はそんな不安を感じ、この場から一刻も早く立ち去ろうとした時、俺たちは明かりに照らされた。

「お、お前はブラド!みんな!賞金首のブラドだ!捕まえるぞ!」

「やべ!見つかった!」

 俺は急いで走り出し、この場を去る。

 が、相手も簡単に逃がしてくれるはずがなく、血相を変えて俺を追ってくる。

「お前たち止まれ!さもなくば死刑だぞ!」

 あん?お前たち?なに言ってんだ?今あいつらが追ってんのは俺一人じゃ…

 そう思って後ろをチラッと見ると、先程俺にぶつかった少女が俺の後ろにビッタリとくっつきながら走っていた。

「お、お前何やってんだ!なんでお前まで逃げてんだ!」

「追われてるから」

「追われてんのは俺だ!お前は関係ないから足止めろ!死刑になるぞ!」

「やだ」

「何でだよ!」

「なんとなく」

「馬鹿だろお前!」

 俺が少女に気をとられてる内に、前からも人が飛び出してきた。

 俺たちは足を止めて、辺りを見渡す。

 道は全て警備兵が塞いでおり、彼らは剣を抜いて俺に突き立てる。

「さあブラド、観念して法の裁きを受けろ!」

 法…法ねえ…

「悪いけど、法なんてものに裁かれるのは真っ平ごめんだ。そんなんで、この俺が死んでたまるか」

「そうか…ならばここで仕留める!」

 警備兵が俺たちに襲いかかろうとした時、俺は袋を地面に置き、腰に差した剣を抜き、意識を剣に集中させる。

 すると剣は赤黒いオーラを纏い、その剣を地面に叩きつける。

 地面は揺れ、体に電流が流れるように轟音が響き、それを見た警備兵たちは足を震わせていた。

 そんな警備兵たちに、俺はにらみながら一言だけ口にする。

「次は斬るぞ」

「ひ、ひいいいいいいい!」

 警備兵たちは一斉に逃げ出し、先程の轟音でほとんどの住民が起きたようであちこちの部屋の明かりが点灯する。

「ま、警備兵は逃げ出したし、顔見られても平気だろ」

 俺は袋を持ち上げ、街中を堂々と走り抜ける。




 街から出た俺は、ある問題を抱えていた。

「……あのさあ、何でお前は俺に着いてくんの?」

 先程の少女は、なぜか街を出た後も俺の後を着いてきていた。

 俺の質問に、少女はこう答えた。

「貴方が気になるから。だから着いてきた」

「気になるねえ…言っとくけど、俺は賞金首だ。大罪人だ。その意味わかるよな?」

「……さあ?」

 俺はこけた。こうなったら最後の手段だ。

 俺は剣を抜いて、それを少女に向けた。

「俺は殺人犯だ。お前をここで殺したっていいんだぞ…」

「…………………」

 こうしても、少女は顔色ひとつ変えず、表情も変えない。

 たまに俺のことを知らずに近寄る餓鬼には、こうすれば一斉に逃げていったが、こいつには通じなかった。

 俺はため息をつき、剣を鞘に納める。

「で、お前は俺が気になるって言ったが、何が気になるんだ?」

「わかんない」

「お前そればっかだな…」

 こんなやつ、さっさと置いてどっかいっちまおうか?そう思った時、少女の腹の虫が鳴く。

 少女は表情を変えないが、どうやら腹は減っているようだな。

 俺は袋の中からリンゴを取り出し、少女に差し出す。

「食えよ。腹減ってんだろ?」

 少女は無言でリンゴを受け取り、それをかじりつく。

「どうだ?美味いか?」

「甘い…」

 少女は表情を一切変えずにそう言った。

「甘いのは苦手か?」

「別に。食べられれば何でもいい」

 ……なんだか、こいつのことがわかってきた気がする。

 こいつ、心がないんだ。だから何を食べても美味いと感じないし、剣を向けても恐怖を感じない。

 ったく、変なやつに会っちまったな。

「で、お前はこれからどうする気だ?俺に着いてくるなんて言わないよな?」

「着いてく」

「即答かよ…」

 めんどくさいことになったな…こいつのお守りをするなんて無理だぜ…

 俺はため息をついてこう言った。

「着いてくるってんなら勝手にしろ。その代わり、俺はお前がどうなろうが知ったこっちゃねえからな」

「わかった」

 こうなったらどうとでもなりやがれ。そんな投げ槍な気持ちで少女の同行を許可する。

「そういえばお前、名前は何て言うんだよ?」

「セカイ。そういう貴方は?」

「俺はブラド。殺人を繰り返した大悪党だ。それでも一緒に来るか?」

「行く」

 そう言うってわかってたよこんちくしょう。

「それじゃあ明日からまた出発するから、今のうちに寝とけ。寝坊したら置いてくぞ」

「わかった」

 俺は袋から毛布を取り出し、それを羽織って眠りにつこうとする。

 そんなとき、その場で寝転がり、寒そうにしているセカイが目に映る。

 ……気にすんな。あいつは勝手に着いてきてるだけなんだから…

 頭でそう訴えたが、俺はセカイに毛布を被せ、寒空の中で俺は眠りにつく。

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