▼96▲ 結婚式と爆破予告
修行場所へ向かう途中、エイジン先生が、イングリッドの抱き枕にされた話をすると、
「もういっそ、イングリッドと普通に付き合ったらどうです」
と、いつもの様にエロ話にあてられて顔を赤くしているアランに呆れられてしまった。
「その提案は、毎朝通学電車で同じ痴漢に遭ってる女学生が、『もういっそ、その痴漢と付き合ったらどう?』、と言われているのに等しいんだが」
抱き枕にされたエイジンが抗議する。
「毎朝、いやらしい惚気を聞かされる方の身にもなってください」
「いやらしいのはともかく、惚気じゃないぞ。若い男女が一つ屋根の下で寝起きしてる状況だと、隠した方が色々と邪推されるからな」
「お二人が毎晩している事は、ある意味邪推される内容を超えていると思いますが」
「まあ、痴女メイドの異常な行動は置いといて、この話で肝心な点は、イングリッドを俺達の計画に協力させられなかった事だ。グレタ嬢が最後まで復讐の意志を曲げなかった場合、アンヌとイングリッドに力ずくで拘束してもらう事を考えていたんだが」
「イングリッドがグレタお嬢様を裏切るとは思えません」
「だな。グレタ嬢とイングリッド相手だと、流石にアンヌも二対一で不利だ。アラン君と俺が加勢しても、あの格闘家共には敵いそうもない」
「女性相手に大の男が情けない話ですが、それが事実です」
「ただ、イングリッドは出来ればグレタ嬢に危険な事をさせたくないと思っている。グレタ嬢に自分の意志で復讐を諦めてもらえれば、丸く収まる訳だ」
「結局、基本方針は何も変わっていないという事ですね」
「基本方針の他に何か可能性があれば、そっちも一応検討してみるのは悪い事じゃないぜ。ところで、ジェームズ君とリリアン嬢の結婚式について、その後変わった事はないか?」
「何もありません。予定通り六日後に、ジェームズ様の実家であるストラグル家の屋敷で、盛大な式が取り行われる事になっています」
「当日屋敷を爆破すると予告したら、式を延期出来ないだろうか」
「その前にエイジン先生が逮捕されますから、絶対やめてください」
検討してはいけない可能性もあるので、注意が必要だ。




