▼84▲ 個人的な周期情報
修行装置のある場所に行く途中、エイジン先生はアランに、夕べから今朝にかけてのイングリッドとのやりとりについて、包み隠さず話して聞かせ、
「女ってのは大変だな」
と、締めくくった。
「大変だとは思いますが、爽やかな朝から男が口にする話題じゃありませんね」
真っ赤になったアランが、困惑気味に答える。
「で、ここからが本題なんだが、あのダメイドはともかく、グレタ嬢の周期ってどうなってるんだ?」
「知りませんよ!」
さらに真っ赤になって声を荒げるアラン。
「そう怒るな。俺だって別に、面白半分にクラスの女子の周期を調べてるエロ中学生男子じゃねえんだから。修行の性質上、体調の悪い時に無茶させる訳にはいかないだろう」
「それにしたって、私が知ってる訳ないでしょう」
「それもそうだが。かと言って、グレタ嬢に直接聞くのも気まずい」
「アンヌならグレタお嬢様のインストラクターですから、その辺も把握してると思いますが」
「じゃ、アンヌに聞いてくれないか」
「たとえ真面目な目的でも、私が聞くと何か怒られそうです。エイジン先生が直接アンヌに聞いてください」
エイジンとアランが修行装置のある場所まで来ると、既にグレタとアンヌが来ており、二人でウォーミングアップをしている最中だった。
エイジン先生はアンヌを少し離れた所に呼び出して何やら話をしていたが、やがてアランの元に戻り、
「事情を話したら、アンヌは普通に教えてくれたぞ。グレタ嬢は先週終わったから、当分問題はないそうだ」
と、何でもない事の様に淡々と報告する。
「そうですか。それにしても、こういう事まで知っておかなくちゃならないとなると、神経を使いますね」
「ああ。だが相手について詳しい情報を知っていれば知っているほど、有利になるのが詐欺ってもんさ」
二人が話をしていると、そこに何かを嗅ぎつけたアンヌがやって来て、
「アラン、ちょっとこっちに来て」
と、有無を言わさず自分の彼氏を引っ張って行った。
「エイジン先生はともかく、アランまでグレタお嬢様の個人情報を知る必要はないでしょう!」
見ると、アンヌは何やらアランを説教している様子である。
愛しのアランが自分以外の女の個人的な周期を知りたがるのは、何だか許せないらしい。




