▼73▲ ブルマの正しい使い方
夕食が終るとついに根負けしたのか、イングリッドは猫耳カチューシャとしっぽを外し、
「女性に恥をかかせるものではありませんよ、エイジン先生」
と訳の分からない事を言う。
「一体何が問題だったのか、自分でよーく考えてみてくれ。そもそも『恥』とは何なのかの辺りから」
呆れを通り越して、むしろ心配そうな口調になるエイジン。
「お客様を喜ばせようと一生懸命なメイドの努力を無視する、鬼の様な所業の事ですね」
「前提が間違っていると結論があさっての方向へ飛んでしまうという、見本の様な回答だな。三流芸人が自分が受けないのを客のせいにするのもそれだ」
「つまり、猫耳メイドという方向性が間違っていたと言う事ですか?」
「そもそも、どこからそんな発想が出るのかが不思議なんだが」
「例の倉庫にその手の資料があったので、それを読んで研究しました」
「まさかその資料ってのは薄い本じゃないだろうな」
「いいえ、コスプレ写真集ですが。メイド萌え属性を強化するパーツを後から付け加えようとすると、どうしても選択肢が限られまして」
「強化する必要がどこにある」
「ユニフォームであるメイド服にこだわったのが敗因だったのかもしれません。やはりここは思い切って、スクール水着か体操服とブルマで勝負すべきだったかと」
「服装と言えば、明日作業を手伝ってもらう時には、作業服と作業用ヘルメットと安全靴と軍手を用意してあるから、それで頼む。くれぐれもケガをしない様に気を付けてくれ」
気遣う振りをして、イングリッドの戯言をスルーするエイジン先生。
「はい、分かりました。微力ながら、出来るだけの事をさせて頂きます」
それ以上コスプレの話題を引っ張らず、大人しく引き下がるイングリッド。
しかしその晩、イングリッドはパジャマの代わりに、胸のゼッケンに「イングリッド」と書かれた体操服とブルマを着用し、エイジンを呆れさせる。
「もういい、あんたの好きにしろ。それはそれで立派な寝巻代わりになるし」
そして翌朝、やはりイングリッドはいつもの様にエイジンのベッドに全裸でもぐり込んでいた。
エイジン先生の頭に、自分の使用済みブルマを被せるというおまけ付きで。
「特性ナイトキャップの被り心地はいかがですか、エイジン先生?」
真顔で尋ねるイングリッド。
「最悪だ」
エイジンはそう言って、ねぼけまなこでブルマを部屋の隅に放り投げた。




