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▼540▲ 走らないでその場に居座り続けた挙句リフォーム詐欺を企てるメロス

 ブランドン君を無罪にする仕事をエイジン先生に依頼しておきながら、その舌の根も乾かぬ内に、


「グレゴリー、魔法捜査局と主要な報道機関に伝えてちょうだい。『一週間後、リング家は長男ブランドン・リングを反逆罪の容疑で審理し、絞首刑に処す予定である。審理を傍聴したければ申し出よ』と」


 傍らに控えている執事へ依頼内容と矛盾する指令をしれっと下す、悪質対立厨ヴィヴィアン。


「お待ちください! まだブランドン様が有罪と決まった訳では――」


 子殺しをやめさせようとするグレゴリーの言葉を一蹴し、


「現時点でほぼ有罪よ。そちらの名探偵さんが何か奇跡を起こしてくださらない限りはね」


 エイジン先生の方へ挑発的に微笑んでみせるヴィヴィアン。


「お任せください! 大金を積めば大抵の奇跡は起こせます」


 何でも金で解決しようとするバブル全盛期の成金、もとい名探偵ことエイジン先生。


「奇跡が起こせるなら金に糸目は付けないわ。じゃんじゃんやってちょうだい」


 負けじとバブリーな号令を発した後、このやりとりを興味深げに観察していたアンソニーに対し、


「さっきも言いかけたけれど、裁判所の広場に絞首台を組んでおいて。一週間後に息子をそこに吊るすから」


 アジの干物でも作る様なノリで実の息子を吊るす台の設置を命じるヴィヴィアン。


「はい、直ちに取り掛かります」


 忠実なのか人の心をどこかに置き忘れたのか、何の躊躇もなく承諾するアンソニー。


「それと、この撃たれたドアを外して旅館に運んでおいてくれ。証拠品として保管したい」


 どさくさに紛れてアンソニーの仕事を増やそうとするエイジン先生。


「よろしいですか、ヴィヴィアン様?」


 一応、当主にお伺いを立てるアンソニー。


「いいわ、すぐに用意出来る一時しのぎのドアと交換して。見栄えは考慮しなくていいから」


 ノータイムで承認するリフォーム詐欺に引っ掛かった格好のカモ、もといヴィヴィアン。


「分かりました。後から正式に交換するドアも発注しておきます」


「頼んだわ。で、他に何かして欲しい事はあるかしら、ホームズさん?」


 エイジン先生の方に向き直るヴィヴィアン。


「ブランドン君の身柄を、我々が宿泊している旅館で預からせてください。その方が事情聴取するにも何かと都合がいいので」


「絶対に森の外に逃がさないと誓える?」


「ボーナスの五千万円に誓って、ブランドン君を外の世界に逃がしたりしません!」


 ヴィヴィアンはしばらく笑った後で、


「いいわ。いっそ、『森の中ならどこに連れ回しても自由』、という事にしましょう」


「それともう一つ、ブランドン君に外部との通信の自由を認めてあげてください。ご学友も心配するでしょうし」


「そうね、それも認めましょう。きちんと最期のお別れを済ませておくといいわ」


「差し当たってはそれだけです。破格の条件を呑んでくださり、ありがとうございます」


 鹿撃ち帽を脱いで芝居がかったお辞儀をするコスプレホームズことエイジン先生。


「ただし、もしブランドンを逃がしたら、代わりにあなたを吊るすわよ」


 そう言って微笑んではいるものの、目がマジなヴィヴィアンに対し、


「ご心配なく。目の前に落ちている五千万円をみすみす逃がす様なヘマはしませんよ」


 飄々と受け流す、いつものエイジン先生。

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