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▼534▲ 少年の瞳と蛇口と水滴に映る乙女のパズルゲーム

 ラブコメ漫画初心者のグレタの為に、


「では漠然とした一般論でなく、実例を使って具体的に解説しましょう。ちょうどここに女性読者をも魅了する可憐な美少女の絵を使って少年誌で許容される表現の限界ギリギリまで挑戦し、ラッキースケベを一つの芸術にまで高めた超有名作品があります」


 イングリッドが普段から愛読していると思しき少年向けラブコメ漫画の単行本を持ち出したちょうどその時、二人がビデオ通話で見ていたエイジン先生の映像が、突然ホラゲーの探索パート並に真っ暗になった。


「停電だ。雷がひっきりなしに落ちてるからその影響だろう。こっちの通話は特に問題ないが、そっちはどうだ?」


 下から携帯とノートパソコンの光でライトアップされて少し顔が怖くなったエイジン先生が尋ねると、


「切れてないわ! 大丈夫よ!」

「電話の回線は別系統らしいですね。エイジン先生が心霊ドッキリ画像っぽくなった事以外は問題ありません」


 むしろ、その映像を面白がっている様子のポンコツ主従。映像的には丸髷に着物という時代劇コスプレをしている自分達の方が遥かに面白いのだが。


 すぐ非常灯が点いて、心霊ドッキリ画像は明度を落とし過ぎた証明写真位にまで回復したものの、


「予報だと激しい雷が明け方まで続くらしいから、いつ回線が落ちてもおかしくない。話してる最中にいきなり切れるのも何か寂しいし、今日はこの辺にしとこうぜ」


「やだ! もっとエイジンと話したい!」

「ラッキースケベの次は、『光の透過と反射を使った裸体表現』についても詳しく考察したいのですが!」


「ページを透かしたり切り貼りして完成するアレか。いい大人が朝まで討論する程のテーマじゃないから早く寝ろ。それより、頼んだ荷物の方をよろしくな」


 何とか構ってもらおうとポンコツ主従が頑張って話している最中にいきなり通話を切る、優しいのか優しくないのかよく分からないエイジン先生。


 それからずっと非常灯の淡い光の下、まだバッテリー残量が十分にあるノートパソコンで編集作業を続け、朝の五時頃にはいつものネタ動画を完成させて一息ついていると、いつしか外の嵐も止んで電源も復活し、


「お、照明が点いた。古いテーブル筐体は大丈夫かな?」


 地下の遊技場へ年代物のアーケードゲームの様子を見に行くエイジン先生。


 誰もいない薄暗いゲームコーナーで、どの筐体も異常なく稼働しているのをざっと確認してから辺りを見回し、


「アンソニーのおっさん来てないな……大事なコレクションが心配じゃないのか?」


 怪訝そうな表情で首をかしげるエイジン先生。


 その後しばらく、眠っている美女を狙う吸血鬼を牧師が十字架型のブーメランを投げて倒しまくるゲームに興じてから、部屋に戻って寝たものの、布団に潜り込んでまだ一時間も経たない内に、


「お休みの所をすみません、エイジンさん。申し訳ありませんが、すぐに起きて頂けませんか?」


 アンソニーの穏やかではあるが妙に圧を感じさせるモーニングコールで起こされた。


「何だ? 遊技場のあんたの大事なコレクションだったら、問題無く動いてるから安心しろ」


 寝ぼけた声で部屋の固定電話に出るエイジン先生。 


「いえ、もっと緊急を要する非常事態です。どうやら昨晩の雷雨に紛れて、何者かがリング家の屋敷に銃弾を撃ち込んだらしいのです。どうか捜査にご協力をお願いします」


 とても緊急とは思えない落ち着いた声で、物騒極まる非常事態を告げるアンソニー。


「組の抗争かよ。あの屋敷はいつから暴力団の事務所になったんだ」


 寝ぼけながらもしっかり突っ込むエイジン先生。

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