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515/551

▼515▲ 座布団を十枚ためるともらえる特に欲しくもない賞品

 意気揚々と胴長リムジンに乗り込み、大音量で八十年代魔法少女アニメの主題歌メドレーを鳴らしていたバブルラジカセを停止させてから、ソファーに深くもたれたまま金縛りで身動きが取れなくなっているベティ、タルラ、ジーンことヤンキー三人娘に向かって、


「やあ、すっごく苦しそうだね、君達!」


 と楽しげに声をかけ、返事を待つエイジン先生。


 もちろん返事はなく、静寂の中、彼女達が言い返すどころか指一本動かす事も出来ずに苦しんでいるのを確認すると、


「そんな君達のために、いいものを持って来たよ!」


 持参したヘッドフォンステレオを一人一台ずつ腹の辺りに置いて両手で持たせ、イヤホンを耳に突っ込んでから再生ボタンを押し、


「こういう時はあせらずに、ヒーリングミュージックでも聴きながら、体が自然に動く様になるまで待つといい」


 と言って、強制的に音楽を聴かせようとするエイジン先生。


 カセットテープ特有の冒頭無音状態が数秒続いた後、ヤンキー三人娘の耳に、


『パッパカパカパカ、パッ、パッ♪』


 体中の緊張感を根こそぎ持って行かれる様な愉快なノリの音楽が流れて来た。


「日本を代表するお笑い番組のテーマソングだ。これを流していれば、どんな心霊現象も怖くない」


 そう言って、身動きが取れないまま訳の分からない異世界の音楽を聴かされるヤンキー三人娘の姿を本人達の許可なく携帯でしばらく動画撮影し、


「ちなみにそのヘッドフォンステレオは曲がエンドレスで再生されるモードにしておいたから、思う存分聴き倒してくれ。じゃ、またな」


 この「瞑想する三匹のヤンキー」と化した三人をその場に放置し、胴長リムジンを後にするエイジン先生。


 裁判所内のカウンセリング部屋まで戻って来るや、


「あいつらに着物を着せて、座布団争奪戦やるのも楽しいかもな」


 相変わらずロクな事を提案しないエイジン先生。


「やめてあげてください」


 言葉の意味はよく分からないが、とにかくあの三人をオモチャにして遊び倒そうとしている事だけは察したアラン君。


「絶対面白いと思うんだけどな。ま、金縛りになった位だし、流石にあいつらも疲れたんだろう。体が動くようになったら、今日の所はホラゲービビリ実況の続きだけで勘弁してやるか」


「何もせずにゆっくり休ませてあげる、という選択肢はないんですか?」


「大丈夫、すぐにまた俺達に悪態をつくくらい元気になるさ!」


 それから約三十分後、回復したヤンキー三人娘がヘッドフォンステレオを外したのを中継映像で確認したエイジン先生は、その日のカウンセリングを終了して、ブランドン君も屋敷に帰らせた。


 アラン君と一緒に胴長リムジンまで来てみると、ヤンキー三人娘は悪態をつくどころか真っ青な顔で、


「マジやべえ……悪霊に取り憑かれちまった」

「三人同時に金縛りにあうって、普通ありえねえだろ……」

「アタシらどうなるんだよ……もうやだ」


 すっかり恐怖に支配されている。


「あんたら面白過ぎ」


 そんな三人を無遠慮に笑い飛ばすエイジン先生。しかし彼女達には、もはや言い返す気力もないらしい。


「まあ、そんなに心配するな。そもそも金縛りは心霊現象とは関係ない。単に脳と体の連動がバグってるだけだから」


 散々怯えさせてから元気づけようとするマッチポンプなエイジン先生。しかし、ヤンキー三人娘の心を支配する恐怖は中々消えない模様。


 そこで、エイジン先生は懐からペンを取り出し、真面目な顔になって、


「ほら、こっち向け。特別に悪霊退散用のルーン文字をおでこに書いてやる。水で洗えばすぐ落ちるから、部屋に戻って風呂に入るまでそのままにしておくんだぞ」


 ヤンキー三人娘の額に「悪」という漢字を書いて行く。


 思わず噴き出しそうになるのを、グッとこらえるアラン君。

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