▼514▲ 神様に愛され女子を目指すワンランク上のナチュラル瞑想
「という訳で、終わったと見せかけて実はまだ終わっていないタイプの二重ドッキリをあいつらに仕掛けてみたいと思います!」
罪悪感のカケラも見当たらないイイ笑顔で、高らかに悪事の続行を宣言するエイジン先生に対し、
「カウンセリングはどうするんですか!」
と、突っ込まざるを得ない真面目なアラン君。
「今日はサボろう。ブランドン君もそれでいいね?」
「はい、全然構いません」
笑顔でこの悪事に加担するブランドン君。
「二回目にしてもうサボリって、ヴィヴィアンさんに悪いと思わないんですか?」
そんなアラン君の真っ当な意見も、
「ヴィヴィアン様には、『今日のカウンセリングでは、「女の子のハートをドキッ! とさせちゃう心理テクニック」をブランドン君に伝授しました』、と報告しとこう。嘘は言ってない」
飄々とはぐらかしてしまうエイジン先生。
「いや、確かに嘘は言ってませんけど!」
「それなら母も満足すると思います」
アラン君の困惑をよそに、状況を面白がるブランドン君。
「だよねー。君ん家のお母さんだって地味なカウンセリングより、女性誌のキャッチーな特集記事とかの方が好きだろうし」
「ははは、流石に心霊ドッキリを特集する女性誌はないと思いますが」
すっかりサボる気満々で笑い合っているこの二人の説得をあきらめ、一人ため息をつくアラン君。
「よし、ドッキリ後半戦スタートだ。前半で散々ビビらせておいた分、後半は特に何もしなくても、いい感じのリアクションが期待出来そうだぜ!」
ノートパソコンのディスプレイ画面に映し出されたヤンキー三人娘のライブ映像を見ながら、ワクワクが止まらない様子のエイジン先生。
「すっかりトラウマを植え付けられてしまったんですね。何か彼女達が可哀想になってきました」
良心の呵責に苛まされる、人のいいアラン君。
「トラウマって程じゃないさ。ただ幻覚に怯えてる様なモンだ」
「いや、それもう重症です」
「大丈夫、あいつらは間違いなくお笑いの神様に愛されているから、今回もきっとやってくれるに違いない!」
しかしエイジン先生の意に反して、ヤンキー三人娘は現在、魔除けのBGM(笑)をガンガン鳴らしているバブルラジカセの前で、ぐったりとソファーにもたれたままノーリアクション。
「コラ、お前ら、何休んでんだ。少しは動いて俺達を楽しませろや」
動物園の檻の前で身勝手な要求をする迷惑客の様なエイジン先生。
「流石に疲れたみたいですね。このまま少し眠らせてあげた方がいいんじゃないですか?」
「いや、待て。よく見ると、あいつら薄目を開けてるし、瞼が小刻みに痙攣してるぞ」
「言われてみれば、表情もどことなく苦しそうですね」
「こいつはひょっとしなくても――金縛りか! しかも三人同時に! あははは、いやー、マジでお笑いの神様に愛されてるわ、あいつら!」
興奮気味に机をバンバン叩きながら笑うエイジン先生。
「大変じゃないですか! すぐに助けに行かないと!」
「金縛り程度じゃ死にゃあしないから安心しろ。それよりこんなオイシイ状況を利用しない手はない!」
心配するアラン君をよそに、持参した紙袋の中からヘッドフォンステレオを三台取り出すエイジン先生。
「何をする気です?」
「金縛り状態のあいつらにこれを持たせる。題して、『瞑想する三匹のヤンキー』だ!」
ロクな事を考えないいつものエイジン先生。