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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ4△

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513/556

▼513▲ 自分で用意した箱の中身を透視する自称超能力者

「とりあえず、もう一度車に乗ろっか」


 と、ホテルのドアマンよろしく営業スマイルで胴長リムジンの後部ドアを開けて待つエイジン先生に対し、


「嫌だ!」

「絶対乗らねえ!」

「気味悪いって言ってんだろ!」


 カーテンに浮かび上がった子供の霊の映像がよほど怖かったと見え、顔を引きつらせて車の中に入るのを渋りまくるヤンキー三人娘。


「大丈夫、もう怖い物は何もないから」


「じゃあ、お前が先に乗れ!」

「アタシらはその後から乗る!」

「何か出たらお前を囮にして逃げるからな!」


「お化け屋敷に入る直前の子供か、あんたら」


 そう言ってエイジン先生が先に入った後、ようやくベティ、タルラ、ジーンの順で車内に乗り込むヤンキー三人娘。


「霊が映ってたのは、バーカウンターの反対側の窓のカーテンだったな?」


「ああ、その辺りだ」 

「ちょうどアタシらが座ってた背後だな」

「振り返ったらいきなりアレだぞ。ビビるなって方が無理――」


 と、その時、突然カーテンに例の眼球の無い目から血を流して笑っている子供の霊が浮かび上がった。


「ひぃっ!」

「ひぃっ!」

「ひいっ!」


 仲良く三人揃って腰を抜かすヤンキー三人娘。


「落ち着け。これは俺がドッキリに使う為に用意したネタ画像だ。作り物って分かれば、そんなに怖くないだろ?」


「十分怖えよ!」

「気味悪過ぎ!」

「早く消せ!」


 体を起こしながら抗議するヤンキー三人娘。


「ちなみに、元画像はコレな」


 エイジン先生がいつの間にか手にしていた小さなリモコンを操作すると、不気味な子供の霊は一瞬で無邪気に笑っている普通の男の子へ早変わり。


「ネットで拾った子供の画像を、顔色をうんと悪くして、目を黒く塗りつぶし、そこから流れ落ちる血の跡を描き加えるだけであら不思議。ドッキリ向け恐怖心霊画像の出来上がりだ」  


 あっけにとられてきょとんとしているヤンキー三人娘の前で、カーテンをさっと開け、


「後は、その画像を車の外からカーテンに投影してやればいい。ほら、あそこでプロジェクターのレンズが光ってるのが見えるだろ?」


 車から少し離れた地面を指し示すエイジン先生。そこに置いてある小さな三脚に固定されたモバイルプロジェクターを見て、瞬時にトリックを理解し、


「ここまでやるか、普通!?」

「たかがドッキリに、どんだけ手間暇かけてんだよ!」

「何考えて生きてんだ、てめえは!」


 騙された悔しさでキレるヤンキー三人娘。


「ラジオにしろプロジェクターにしろ、ちょっとカーテンを開けて外を見るなり、車から降りて辺りの様子を確かめるなりすれば、トリックはすぐに見破れたはずだぜ。ところが、あんたらはたったそれだけの事すら出来なかった。『怖い』っていう感情に負けたんだ」


「ぐぬぬ」

「ぐぬぬ」

「ぐぬぬ」


「という訳で君達にも、感情を理性で抑えるセルフコントロールの大切さがよーく分かりましたね? とあるギャグ漫画家が、そんな君達にピッタリのこんな名言を残しています。『思い通りに生きてごらん、ロクな人間にならないから』」


「んだと、コラ!」

「ケンカ売ってんのか!」

「てめえだけにゃ説教されたくねえわ!」


「さて、今回のドッキリはこれで終わりだ。もう何も仕掛けはないから安心しろ。俺はこれからブランドン君のカウンセリングの続きに戻るが、ここであんたらが待ってる間に何か起こったとしても、それは純粋に心霊現象だから気にするな」


「何さらっととんでもない事言ってんだ!」

「何か起こったら、百パーてめえの仕業に決まってる!」

「CDトレイの開閉だってお前がやったんだろ?」


「え、最後何の話?」


「とぼけんな。意味もなく、CDトレイを出したり引っ込めたりして、アタシらをビビらそうとしただろ?」


 その現象がずっと気になっていたらしいジーンが問う。


「やってねえぞ。バブルラジカセのリモコンは電波じゃなくて赤外線式だから、車の外からだとカーテンで遮られて中まで届かねえし」


「え」

「え」

「え」


「ま、かなり古い機械だから、何か誤作動を起こしたんだろうよ。気にするな。じゃ、俺はこれで」


「ちょ、ちょっと待て!」

「嘘だろ? 嘘って言え!」

「逃げんな、コラ!」


 文句を言いまくりつつも急に怖さがぶり返して外に出る度胸もなく車に残ったヤンキー三人娘を尻目に、仕掛けておいたラジオとプロジェクターを回収して悠々と裁判所に戻って行くエイジン先生。


「あのCDトレイの開閉はエイジン先生がやったんじゃなかったんですか?」


 カウンセリング用の部屋に戻ると、ノートパソコンで一部始終を見ていたアラン君にそう問われ、


「もちろん、俺の仕業に決まってる! リモコンの赤外線は確かにカーテンで遮られるが――」


 懐からボタンが一杯ついたバブルラジカセ用のリモコンを取り出し、


「――そのカーテンのわずかな隙間からラジカセを狙えばいいだけの話だ。透視のマジックでもよく使われる馬鹿馬鹿しい程単純なトリックだが、トリックは単純であればある程効果的なのさ」


 ドヤ顔で解説してみせるエイジン先生。


「勉強になります」


 解説を聞いた後、屈託のない笑顔で言うブランドン君。


「いや、こういう事はあまり勉強しない方が……」


 善良な青少年の将来を案じるアラン君。


「全部解決したと見せかけて未解決の謎を一つ残し不安を煽る、これはホラー映画でもよく使われる手法だぜ!」


 善良な青少年に悪知恵を授けようと企むエイジン先生。

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