▼512▲ 恐怖の本質を解説しながら煽るスタイル
ドッキリに引っ掛かるまいといくら頑張っても結局引っ掛かるリアクション芸人の鑑ことベティ、タルラ、ジーンのヤンキー三人娘をからかう様に、
「さて、ここで皆さんに問題です、人はなぜ『怖い』と感じるのでしょう?」
クイズ番組の司会の様にすっとぼけた口調で問いかけるエイジン先生。
「薄っ気味悪ィからだ!」
「いきなり化け物が目の前に出て来りゃ、誰だってビビるわ!」
「ゾンビとか悪霊とか、もう、どうしろってんだよ!」
怒りながらも律義に答えてしまうヤンキー三人娘。
「なるほど。じゃあ、もう一度車の方に戻ってください」
「戻るか、ボケ!」
「何が『じゃあ』なんだよ!」
「ドッキリだと分かってても、まだ気味悪ぇわ!」
「いいですか。恐怖の本質は『不可解』、もっと言うと、『どう対処していいか分からない』という事です。つまり、対象をしっかりと観察し、その本質を見抜き、対策を立てられれば、恐怖は消えます。という訳で、ドッキリのネタバラシをしてやるから、つべこべ言わずについて来い」
かくて、まだビクビクしているヤンキー三人娘を引き連れ、夜の闇の中、広場に停めてある胴長リムジンへとやって来たエイジン先生。
「まずは子供の笑い声のトリックからだ。あんたらは逃げるのに必死で気付かなかったろうが、よく見ると車の前後の窓ガラスと左右の側面と屋根の上に、箱みたいな物が吸盤の付いたストラップでくっつけてあるだろ?」
そう言われて、確認する為に恐る恐る胴長リムジンに近付き、
「ポケットラジオじゃねえか!」
「いつの間に仕掛けやがった!」
「ここから音を出してたんだな!」
素っ頓狂な声を上げるヤンキー三人娘。
「はい、正解。カーステレオから外部の音源を出力させたい時、トランスミッターを使ってFMラジオへ電波を飛ばすのは知ってるか? それと同じ原理だ。
「ラジオごとに受信する電波の周波数を変えておけば、それぞれバラバラに好きな音を好きなタイミングで流せるワイヤレススピーカーセットの出来上がりだ。ちなみに車の下にもラジオを一つ仕掛けてあるから、前後上下左右6チャンネルの贅沢なサラウンドが楽しめる環境になっている。
「車内のバブルラジカセのラジオも含めると7チャンネルか。そっちの方はタイマーでカセットモードからFMラジオモードに切り替わる様に予めセットしておいた。バブルラジカセってのは多機能だから、そういう事も出来るんだよ。
「俺が外でラジオを取り付けてる間、あんたらはずっとカーテンを閉め切った車内でガンガン音楽を鳴らしていたから、全然気付かなかったぜ。まあ無理もないか。
「なんたって、昨日はカーテンを開けたら、いきなり窓の外にゾンビがいたんだもんな! そりゃあ、怖くて開けられないよな!」
ドヤ顔で煽るエイジン先生。
「くだらねえことしてんじゃねえ!」
「そのムダな労力はもっと他の事に向けろ!」
「一体何がしたかったんだよ、てめえは!」
図星を指されて喚き立てるヤンキー三人娘を、
「じゃ、次は子供の霊の映像のトリックな」
スルーして解説を続けるエイジン先生。




