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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ4△

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509/556

▼509▲ バブルラジカセで殴り付けて敵を倒すタイプの魔法少女

「いいですか、恐怖とは結局自分の心の持ちようです。だから逆に言えば、ゾンビに追われようが悪霊に取り憑かれようが、心を穏やかに保てば怖い事なんか何もありません」


 古井戸から旅館の前に引き返すと、悪霊に取り憑かれたと思い込んでいるベティ、タルラ、ジーンを前に、もっともらしい説教を始めるエイジン先生。


「いや、どっちもメチャクチャ怖えよ!」

「そんな状況で心を穏やかに保てたら、むしろ狂ってるだろ!」

「ごたくはいいから、さっさと魔除けグッズよこせ!」


 しかしどんな説教も心に届く事なく、親鳥にエサを要求するツバメのヒナの様にひたすら魔除けグッズを要求するヤンキー三人娘。


 そんな彼女達の為に旅館の中へ入り、普通に考えれば魔除けグッズとは思えない代物を持って引き返し、


「ま、確かに非常時に心を穏やかに保つのは難しいかもしれません。そこで今回用意したのがこちら! 魔除けのBGM第二弾!」


 まずは茶色い磁気テープを巻いた二本のリールが内蔵されている、透明なプラスチックで出来た手のひらサイズの薄い箱を、ヤンキー三人娘の前に、ずい、と差し出すエイジン先生。


「うわ、カセットテープじゃん。懐かしい」

「小さい頃見た記憶が微かにあるわ」

「でも、車にそれを再生する機器は付いてねえぞ」


 一応、それが音楽を聴く為のツールである事は知っているらしいヤンキー三人娘。


「大丈夫、これがある」


 次に足元に置いた、流線形の横長ボディを持つ巨大なCDラジカセを指し示すエイジン先生。


「無駄にでけえな」

「カセット一つ再生するのにどんだけスペースが要るんだ」

「もっと小さいのはなかったのかよ」


「こいつはバブルラジカセと言ってな。二十数年前、俺の世界が空前の好景気だった頃を象徴する家電製品の一つだ。でかい分、多機能で音もいい」 


 そう言ってラジカセの上部の蓋を開き、用意したカセットテープを装着してから、よっこいしょ、と持ち上げ、


「車のバーカウンターの上に置いとけ。前に持ち込んだ神獣像と並べれば、それだけ魔除けの効果もアップする」


 しれっと嘘を並べ立てつつ、ベティに手渡すエイジン先生。


 ベティはずっしりした重さに少しふらつきながら胴長リムジンに乗り込み、それを木彫りの熊と並べてバーカウンターの上に置く。


 セッティングが完了した所で、一行が再び乗車し、


「それでは、ミュージックスタート!」


 エイジン先生がラジカセの再生ボタンを押すと、昨日の無駄に熱い昭和特撮の主題歌とは真逆の、春のそよ風の様なほんわかとした歌が流れて来た。


 拍子抜けして言葉を失っているヤンキー三人娘を観察しつつ、


「これは俺の世界の八十年代の魔法少女アニメの主題歌集だ。今の魔法少女と言えばバトルものが主流だが、当時は日常のささいな事件を魔法で解決するほのぼのドラマこそが王道だった。それはさておき、心を穏やかにするには打ってつけな曲だろ?」


 アラン君に耳打ちするエイジン先生。


「確かに心が癒されますね。で、魔除けの効果は?」


 そう尋ねるアラン君に対し、


「え、ないよ?」


 聖母の様な微笑みを浮かべながら答えるエイジン先生。


 かくて魔法のプリンセスやら天使やら妖精やらスターやらのBGMによって高級感が台無しになった胴長リムジンは、昨日と同じく裁判所に向けて出発し、


「あんなスレたヤンキー共でも、こういうほのぼのとした魔法少女アニメを夢中になって見てた幼い頃があったんだ、と思うと不思議だよな」


 何気にひどい事を言って笑うエイジン先生。


「時の流れは残酷ですね」


 もっとひどい事を言うアラン君。

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