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499/551

▼499▲ 男湯と女湯が入れ替わる時間を高確率で間違える主人公とヒロイン

 次から次へと恐怖系ドッキリを仕掛けられ、くたくたに疲れきって眠りについたヤンキー三人娘が案の定ゾンビに襲われる悪夢にうなされている頃、エイジン先生は自分の部屋でテーブルの上に置いたノートパソコンに向かい、彼女達のホラゲービビリ実況動画を編集しながら、ガル家のポンコツ主従に電話を掛けていた。


「エイジン!」

「エイジン先生!」


 昨晩同様、枕元にスピーカーモードにした携帯を置き、今か今かとベッドで待機していたグレタとイングリッドが、早押しクイズの回答者よろしく即座に電話に出る。


「二人共元気そうだな。何かそっちに変わった事はなかったか?」


 熱意溢れるポンコツ主従とは対照的に、座椅子の上で呑気にあぐらをかき、いかにも編集作業の片手間といった態で尋ねるエイジン先生。


「特にないわ! エイジンの方はどう? 仕事は上手くいってる?」

「私達の目がないのをいい事に、ピンクコンパニオンを引っ張り込んでないでしょうね?」


「ここはそういう旅館じゃねえよ! それに俺は今、当主への報告をまとめる作業で忙しいんだ」


「イングリッド、ピンクコンパニオンって何?」

「エロいサービスありの女宴会要員の事です、お嬢様」


「人の話を聞け。それと説明せんでいい」


「まさか、本当に引っ張り込んでないでしょうね、エイジン!」

「由緒ある名家の接待ともなれば、さぞやレベルの高いエロ宴会が催されるのでしょうね、エイジン先生」


「由緒ある名家がそんな事するか! そもそも多感なお年頃の少年の恋愛相談の為に呼ばれたカウンセラーがいきなりエロ宴会でフィーバーしてたら、信用ガタ落ちだ」


「普段人を騙してばかりいるから、こういう時に信用されないのよ」

「エイジン先生ならこうやって私達と会話しながら、テーブルの下で女に咥えさせていても不思議ではありません」


「不思議なのはあんたらの頭の中だよ。今、部屋には俺一人だ。アラン君はとっくに自分の部屋に戻って愛しのアンヌとイチャイチャ電話の真っ最中だし」


「じゃあ、エイジンが今部屋に一人だって証明する人は誰もいないじゃない」

「やましい所がある人間ほどベラベラしゃべるものです、お嬢様」


「信用してもらわなくて結構だよ。そんな訳で、俺はまだやらなくちゃならない仕事があるから、もう切るぞ。おやすみ」


「切らないで!」

「では、こうしましょう。通話を音声のみから映像ありに変更して、今いる部屋の様子をこちらにライブで見せてください。そうすれば信用して差し上げます」


「何様だよ。まあいいや。ちょっと待ってろ……これでいいか?」


「映ったわ。これがエイジンの泊まってる部屋?」

「ではエイジン先生、まず部屋の中をぐるりと映してください」


「あいよ」


 イングリッドの指示に従い、携帯を手で持ったまま座椅子を回転させ、自分の周囲三百六十度を映して見せるエイジン先生。


「すっきりしてて、いい感じの和室ね。私も泊まってみたいわ!」

「なるほど。エロ宴会は催されていませんね。注意深く耳を澄ませていましたが、女がこっそり逃げる足音も聞こえませんでしたし」


「これで満足したか?」


「イングリッド、判定は?」

「シロ、と言いたい所ですが、まだ怪しい場所があります。今すぐテーブルの下を映してください、エイジン先生!」


「疑り深いやっちゃな。ほれ」


 エイジン先生が携帯をテーブルの下の薄暗い空間に差し入れると、ポンコツ主従が食い入るように見ていたビデオ通話画面に、突然ゾンビの顔がアップで映し出された。


「ひっ!」

「ひっ!」


 思わずベッドの中でうつぶせのまま、ぴょん、と飛び上がるポンコツ主従。


「あははは、引っ掛かった! 安心しろ、ただのマスクだ」


「どうしてそういう意地悪ばっかりするの、エイジン!」

「ここは特にやましくない理由で隠していた女が見つかって、誤解が解けるまで私達にとっちめられるターンでしょう! エイジン先生!」


「何そのラブコメの温泉回とかでよくあるシチュエーション。あいにく俺はそんなキャラじゃねえから」


「まったく、可愛げがないわね!」

「たまには、『ふ、二人とも、これは誤解だ! 俺はこの子とやましい事なんか、何もしてない!』と、キョドりながら弁解するエイジン先生を見てみたいんです! 心から!」


「実際、女とやましい事なんか何もしてないし。むしろアラン君を護衛する役目上、女に嫌われる様な事しかやってない」


「リング家で一体何やってるのよ、エイジン!」

「実にイキイキとした表情で迷惑千万なイタズラに励むエイジン先生の姿を余裕で想像出来ました」


「それはともかく、まだ仕事に色々と必要な物があるんで、こっちに送ってくれないか。後でリストアップしたメールを送るから」


「全部イタズラに使うつもりね!」

「承知しました。ですが、あまりやり過ぎてリング家の怒りを買う様な事態だけはくれぐれも避けてください」


「大丈夫、イタズラと言っても、エリマキトカゲにヘビをけしかけて走らせる程度だ」


「?」

「殺す気満々じゃないですか、エイジン先生」


 エイジンが何を言ってるのか分からないグレタと即座に理解出来るイングリッド。


「冗談だ。終わった後は仕掛けられた方がアハハと笑い飛ばせる様な他愛のないイタズラしかやらないよ」


 爽やかな口調で言いきるエイジン先生。


 一方その頃、ヤンキー三人娘はまだゾンビに襲われる悪夢にうなされ続けていたのだが。

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