▼496▲ 視聴者に向かってこれから仕掛けるドッキリの内容を簡潔に説明する陽気なゾンビ
「さて、一番肝心な話を聞けた事だし、今日のカウンセリングはこの辺にしとこうか。続きはまた明日だ」
何事も無かったかの様に携帯を懐にしまうエイジン先生。
「明日もここでやるんですか?」
そんなエイジン先生を全く疑う事なく屈託の無い笑顔で尋ねるブランドン君。
「ああ、この心霊スポットはあの怖がりな三バカ共を大人しくさせるのに便利だからな!」
「あはは、でも、ちょっと可哀想ですね」
「いや、これも君のお母さんから頼まれている大切な仕事の一つなんだ。『人一倍怖がりなあの子達に心霊スポットでドッキリを仕掛けて精神を鍛えてあげて』とね」
ヴィヴィアンから来たメールの内容を自分の都合のいい様に誇張して伝えるタチの悪いエイジン先生。
「母がそんな事を?」
「何だかんだで、君のお母さんはあの問題児達を結構気に入っているみたいだよ。『バカな子ほど可愛い』ってやつだ。そんな訳で、ここでちょっと待っててくれ」
色々な小道具が入った例のペンギンの紙袋を持って、意気揚々と部屋の外に出るエイジン先生。
「すみません、エイジン先生はああいう人なんです。こちらに滞在中、色々とやらかして回るかもしれませんが、平にご容赦ください」
申し訳なくなったのか、エイジン先生が何もしない内からブランドン君に謝ってしまう心配性のアラン君。
「いえ、エイジン先生のやり方については、母も僕も既にテイタムちゃんから色々聞いて分かってますから大丈夫です。どうぞ、やりたい様にやってください」
母親のヴィヴィアンとはまた異なるベクトルで器の大きいブランドン君。
部屋に残された二人がそんな話をしながら待つ事約五分。突然ノックもなしにドアが開き、ボロボロの服を着たやたら顔色の悪いゾンビが両手を前に突き出しながら、「ヴァァァァ……」という不気味な呻き声を上げつつ、ゆっくりと部屋に入って来た。
「うわっ! びっくりした!」
驚いて思わず椅子から立ち上がるアラン君と、
「中身はエイジン先生ですね? 一体どうしたんですか、その格好は?」
一瞬ビクッとしたもののすぐに笑顔になり、椅子に座ったまま尋ねるブランドン君。
「パーティーグッズのコスプレ衣装さ! マスクの造形がいいから、中身が俺だと分かってても結構怖いだろ?」
顔色の悪いゾンビのマスクを被ったまま陽気に答えるエイジン先生。
「確かに、正体が分かった今でも不気味です」
「演技が上手いのもありますね。ゾンビっぽいゆっくりとした動きが真に迫ってましたよ」
まじまじとゾンビを観察しながら感想を述べるアラン君とブランドン君。
「はい、そんな訳で、今からこのゾンビのコスプレ衣装を使って、外に停めてあるリムジンの中でビビリまくっているベティ、タルラ、ジーンの三バカ共にドッキリを仕掛けたいと思います!」
ドッキリ仕掛け人にありがちな妙にウキウキとした口調でしょうもないイタズラを予告する顔色の悪いゾンビ。




