▼494▲ 悪霊とネカマしかいない悲惨なハーレム
その後、エイジン先生が『葬式の参列者』について説明すると、
「なるほど、僕は無意識に失礼な態度を取っていたんですね。あの人達には悪い事をしてしまいました」
陰で失礼な発言をしていたヤンキー三人娘ではなく何の非も無い自分を責める人のいいブランドン君。
「なーに、悪いのはあいつらの頭の方だから気にすんな」
もっと失礼な発言をして笑う人の悪いエイジン先生。
「もっとも、葬式の参列者みたいな暗い奴として嫌われる位でいいのかもしれません。その方が、あの人達も僕を見限り易くなるでしょうし」
「ところがどっこい、相手が葬式の参列者だろうと、『リング家の嫁になって、自分をバカにしていた奴らを見返してやりたい』というタチの悪い結婚マウントは魅力的だから、中々見限れずにいるのが現状だ。ブランドン君が葬式の参列者なら、あいつらは成仏出来ずにこの世に留まり続ける悪霊みたいな存在だよ」
「はは、流石に『悪霊』はひどいです」
「だから、ブランドン君があいつらにプロポーズすれば即承諾するぞ。何なら『三人全員と結婚したい』って言っても、すんなり受け入れるぜ」
「節操の無いハーレムは、一途な恋愛至上主義の母が嫌がるでしょうね」
「おそらく君のお母さんが望んでるのは、『自分の幸福だった結婚生活を息子夫婦に再現してもらう』事だろうからな」
「それは僕にとっても理想です。仲睦まじいおしどり夫婦って、すごく憧れます」
「かなり難しそうだけどな。どんなにイチャラブなバカップルでも、結婚後は急速に冷めるケースが多い」
「最後まで冷めなかったウチの両親は超レアケースなんですね。まあ、実際の所、愛の無い政略結婚だとしても、この薄暗いリング家の森に一生閉じ込められる悲愴な覚悟がしっかり出来ている女の人が来てくれるなら、それだけで十分ありがたいです」
「ずいぶんとネガティブだな。もっとポジティブに考えようぜ。女といっても色々だ。お家大好きなインドア派の女にとっちゃ、この俗世間と隔絶されたリング家の森はむしろ理想郷かもしれん」
「ただ、そういう人とは知り合う機会が無いんですよね。インドア派なだけに」
「大事に大事に育て過ぎた深窓の令嬢とか、お母さんの知り合いの娘に一人や二人いないもんかねえ」
「大事に育てたのなら、なおさらここには嫁にやりたくないでしょう」
自虐気味に苦笑するブランドン君。
「いっそ、ネトゲで引き籠りの女でも探すか」
「それだと高確率でネカマが釣れそうです」
「よく分かってらっしゃる。実際に会ってみたら、『美少女かと思った? 残念、さえない無職のオッサンでした!』、とかな。嫁にはなれなくても、楽しい遊び友達にはなれそうだ」
「楽しいかもしれませんが、その人の将来がすごく心配です」
「そんな奴らは心配するだけ無駄だよ。それはともかく、話を元に戻そう。現在、ブランドン君に女っ気は無し。だから後はヴィヴィアンさんに、『あなたの息子さんは現在いい意味でも悪い意味でも何も心配する事はありません』、と報告して納得させられれば、今回の件はほぼ解決だ」
「すぐに納得してもらえればいいんですが、今まで僕がいくら言っても聞く耳を持たなかった母ですから、かなり難しいんじゃないかと思います」
「まあ、難しいだろうなあ」
そこで一旦言葉を切って腕を組み、
「女以外で、君がお母さんに言えない様な隠し事をしている限りはね」
全てを見透かした様な口調で、しれっと言うエイジン先生。




