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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ4△

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▼469▲ 名門野球部に在籍していただけの凡人が耐えきれなくなって別の学校に転校したらそこの野球部で名選手と勘違いされてそのギャップを埋めようと毎晩特訓を重ねる少年

 かくて送迎用リムジン内に予め用意されていたコーラに加え、エイジン先生が売店で補充した菓子をプラスした、全身全霊でグータラしたくなる系の宴が始まると、


「リング家の森っちゃ、やたらでかくて有名だけど、マジでどこまで行っても木しかねえでやんの」

「道に沿って行きゃ迷子にはならないけどな。道から外れると遭難するレベルだぜ。シャレになってねえ」

「だだっ広い森の中に色々と建物があるんだが、リング家の屋敷とか使用人が住む所とかの他に、病院とか食堂とかスポーツジムまであってよ。何に使うのか分からない怪しい建物もありやがるし、ホラーゲームに出て来る村かっての」


 ギョロ目のベティ、ジト目のタルラ、ギロ目のジーンのヤンキー三人娘はすぐに仕事を忘れ、日頃の不満をぶちまけ合うネガティブな女子会へと移行する。


「普通じゃ手に負えない魔法使い用の取り調べ室とか裁判所まであるって話だよな。見た事あるか?」

 

 三人の愚痴を適当に聞き流しつつ、その中から有益な情報を引き出そうと目論むエイジン先生。


「ああ、でも、実際に使われてるのは見た事ねえな」

「一度見てみたいけどな。どんなすげえ魔法使いだろうが、リング家の森に来りゃタダの人だ」

「日頃周りを見下してる魔法使いのエリート様が、タダの犯罪者に転落するザマを見物するのは、さぞや愉快だろうよ!」


「発想がまんま下層階級だな。いいとこのお嬢様だったら、もっと心に余裕を持てよ」


「ハッ、誰が下層階級だって? デンパス家と言やあ、お前だって聞いた事位あるだろ?」


 車を運転しながら偉そうに言うベティ。


「アタシだって正真正銘バクァヘッド家の令嬢さ。嘘じゃないぜ?」


 ソファーにふんぞり返って偉そうに言うタルラ。


「アタシはアーパー家だ。どうだ参ったか、平民風情が」


 偉そうにエイジン先生を挑発するジーン。


 そんな三人の実家自慢を、


「知らん。俺はこっちの世界に来てまだ日が浅いんだ」


 ケロッとした表情でバッサリ切った後、


「アラン君、いまこいつらが言った名前知ってるか?」


 振り返って尋ねるエイジン先生。


「もちろん知ってます、正直驚きました。いずれも名立たる魔法使いの名家です」


 街角でばったり宇宙人に遭遇したかの様に目をぱちくりとさせて驚くアラン君。


「身分の違いを思い知ったか? このド庶民が」

「無知ってのは怖いよな。今まで自分がどれだけ無礼を働いてたか気付いてなかったんだからねえ」

「本来こうして対等に口が利ける相手じゃないんだが、ま、特別に許してやろう」

 

 エイジン先生を嘲る様に軽口を叩くヤンキー三人娘。


「へえ、じゃ、あんたらもさぞやすごい魔法使いなんだろうねえ」


 もちろんそんな嘲りは効かないどころか、逆に相手の心をほんの一言で深く抉るエイジン先生。


 ヤンキー三人娘は一瞬で真顔になり、


「るっせえな! リング家の森に入っちまえば、魔法もクソもねえし!」

「リング家の嫁になるのに魔法なんて必要ねえんだよ、タコ!」

「この美貌の方が魔法より遥かに役に立つわ、ボケが!」


 ブチキレてエイジン先生に食ってかかる始末。


「語るに落ちたな。魔法使いの名家の出なのに大して魔法は使えないんだろ。だからこそリング家の花嫁候補に差し出された、と」


 さらに心を抉る人の悪いエイジン先生。


「何なら今、魔法でお前の首を絞めてやろうか?」


 ジト目のタルラが脅しても、


「出来もしないハッタリはかまさない方がいいぞ。そんな便利な魔法が使えたら、すぐナイフに頼るはずがない。第一、魔法を悪用したら魔法捜査局の案件になる。それがこの世界のルールだろ?」


 エイジン先生は飄々とこれを受け流し、


「それに、こっちにはあんたらよりずっと優秀な魔法使いもいるしな! 俺の首が絞まる前にアラン君が魔法であんたの頭を床にくっつけて動けなくしてやるから」

「そんな事しませんよ!」


 アラン君に無茶振りして、即ツッコミを入れられた。


「え、アラン君も魔法使いなのか?」


「こう見えてかなり優秀だぜ。名家の出じゃないが」


 アラン君の素性を知るや、ヤンキー三人娘はにわかに活気づき、


「なあ、アラン君、アタシと結婚しねえ? 魔法使いの名家の一員になれるぜ!」

「魔法なんか使えなくったって、魔法が使える旦那をゲットすりゃいいだけの話さ!」  

「アタシと結婚しろよ! これだけのイケメンなら、それだけで一族の奴らに自慢できる!」


 エイジン先生の向こうでドン引いているアラン君に対し、熱烈な婚活を開始した。


「他力本願だな、おい。もっとこう、自分で努力して高みに上がって行こうって発想はないのか。名門野球部に在籍していただけの凡人が耐えきれなくなって別の学校に転校したらそこの野球部で名選手と勘違いされてそのギャップを埋めようと毎晩特訓を重ねる少年の様な――」


 そんなエイジン先生の訳の分からない説教を無視して、ヤンキー三人娘はアラン君に向かってギャーギャーとわめき続け、


「――大工の親父が少年の為に投球マシンを作って夜の神社で特訓するシーンが感動的でな」


 それに対抗するかの様に、訳の分からない説教を続けるエイジン先生。


 ちょっとした学級崩壊状態。

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