▼468▲ サービスにこれ努めて最終的に客を骨の髄までしゃぶり尽くすキャバ嬢
休憩の後、送迎リムジンの運転をギョロ目のベティと交代したジーンが、後のバーカウンターにおもてなし要員として乗り込んで来た。
他の二人と同じくギャング服に身を包んだジーンは、ジト目のタルラと共にソファーにどっかと座り、
「ベティとタルラはたっぷり楽しんだのに、アタシだけアラン君に何もしてないのは不公平だろ。なあ、ちょっと位イケメンに触らせろよ」
離れた所に座って怯えているアラン君に向かって両手を軽く突き出し指をわきわきさせるその姿は、お色気少年漫画に出て来る「ぐへへ、オッパイもませろ~」と女の子に迫るエロオヤジそのものだった。漫画だとその後強気系ヒロインに殴られて空中にふっ飛ばされるまでがお約束。
「はい、踊り子さんには手を触れないでください。さもないと後でこわーいお姉さんに別室でお説教されますよー」
マナーの悪い観客から踊り子を守るストリップ劇場の従業員の様に、おもてなし要員からアラン君を守るエイジン先生。
「サービス悪ぃな、おい」
その大きな鋭い目でギロリとエイジン先生を睨むジーン。やや面長なその顔はどこか荒馬を思わせる。
「あんたがサービスされてどうすんだよ。本来サービスする立場だろう」
ジーンにツッコみながら、サービスエリアの売店で買い込んだ菓子類の袋を次々と開けて行くエイジン先生。
「いいじゃねえか、こっちはずっと運転して疲れてんだ」
そう言ってエイジン先生が開けた袋の一つから勝手にポテチをつまんで食うジーン。
「ご苦労さん、と言いたい所だが、一つツッコんでいいか? その西部劇に出て来そうな銃は何?」
ジーンの足元に銃口を上に向けて立て掛けてある素朴なライフル銃を指差すエイジン先生。
「アタシの得物さ。射撃は得意でね」
「ああ、三人で使用する武器を別々にしてキャラ立てしてるのか。そうでもしないと誰が誰だか分からなくなるもんな。あんたらヤンキー三人娘は」
「人をお笑いトリオみたいに呼ぶな!」
憤るジーン。
「大事なお客様を守る為に武装してるんだよ。リング家ってのは色々と狙われる事もあるんでね」
その横で自分のナイフを懐から取り出し、指先でくるくると器用に回して見せるタルラ。
「その守るべき大事なお客様にナイフを突き付けてたのは誰だよ」
冷静にツッコむエイジン先生。
「るっせえな。男が細かい事を一々気にするんじゃねえ!」
忌々しげにナイフをしまうタルラ。
「武器を突き付ける? こんな具合にか?」
片手で銃を取り、イタズラ半分に銃口をエイジン先生の心臓の辺りに向けるジーン。
「もしかしてその銃、片手で弾丸を装填出来るやつか? そのでっかいレバーの所を持って、こう、くるっと回して」
全く動揺する事なく、平然とした様子で尋ね返すエイジン先生。
「スピンコックなら出来るぜ。ここでやるには狭過ぎるけどな!」
嬉しそうに答えるジーン。
「だな。グラスにぶつかって派手に引っ繰り返すといけないから、銃はそっちに置いとけ。あんたら飲み物はコーラでいいか? 三人で交代して運転するって事は、アルコールはダメなんだろ?」
返事を聞く前に既にグラスを用意し、皆の分のコーラを冷えたペットボトルから注ぎ始めるエイジン先生。
「次の休憩の時に車から降りたら実演してやるよ! 映画みたいにな!」
「あんた、人の話を聞かないってよく言われるだろ。それと公衆の面前でそんな物騒なモン振り回すな。通報されるぞ」
冷静にツッコミを入れながら、
「運転してる奴の分はストロー付けといたからな。時々、後から差し出して飲ませてやるといい。あと菓子も」
ヤンキー娘達の分のコーラをまとめて押しやるエイジン先生。
「お前、案外気が利くじゃねえか」
運転しながら後に声を掛けるギョロ目のベティ。
「これはアラン君の分。俺が防波堤になってこいつらを食い止めてるから、もっと前に来ても大丈夫だ」
さらにアラン君の方を振り返り、おいでおいでと手招きするエイジン先生。
こうして一通りノンアルコールの宴の準備が整った所で、
「じゃ、もっと詳しく聞かせてもらおうか。リング家の内部情報を」
サービスと引き換えに、この場の支配を完了したエイジン先生。




