▼466▲ ふとした瞬間に心の中で再生される伝説の決め台詞とそれに続く効果音
「まあ、ブランドン君にとっても、あんたらに嫁に来られたらこれ以上の不幸はなさそうだもんな。『結婚は人生の墓場』って言うが、墓場どころの騒ぎじゃない。正にこの世の大迷惑だ」
そんなエイジン先生の失礼千万な挑発に対し、
「んだと、この野郎!」
「アタシらみたいな美女とヤれるだけでもこの上ない幸せもんだろうが!」
全力で乗ってしまうギョロ目のベティとジト目のタルラ。
「じゃ、何でブランドン君はあんたらと会ってる時、『葬式の参列者』みたいな暗い表情をしてたんだろうねえ?」
「陰キャだからさ」
「心の病気なんじゃねえのか」
「どっちも違う。はい、消えた!」
そう言って、昔のクイズ番組の司会よろしくバーカウンターを、バン、と叩くエイジン先生。
「違うのかよ」
「じゃあ一体何だってのさ?」
「つい昨日まで、リング家にライアン・ニールキックっていう、好色一代男を絵に描いた様な政治家のオッサンが来てたろ。あんたらも口説かれなかったか?」
「ああ、あのエロ親父か。馴れ馴れしく体をベタベタ触って来たから、拳銃で脅して追っ払ってやった」
「政治家だか何だか知らないが、ああいう図々しいのはタイプじゃないね。エロ親父は金払ってプロのお姉さんに相手してもらえってんだ」
「やっぱりブレないな、あの親父。ま、それはともかく、そのライアンは小さな女の子を連れてただろ? テイタムっていう小学生の娘なんだが」
「あんな親父じゃ、将来絶対グレるね」
「んで、持て余された挙句、リング家に花嫁候補として放り出されるハメになるかもな」
「あんたらみたいにか」
「一言多いんだよ、てめえは!」
「で、そのテイタムって子がどうした?」
「テイタムお嬢ちゃんはブランドン君を評して、『真面目で優しくていい人でした』って言ってたんだが、あんたらが言う様に『暗い』とは一言も言わなかった」
「それがどうしたってんだよ?」
「まだ子供だし、人を見る目がないんだろ」
「ところが、このテイタムお嬢ちゃんは小さいながらも人の本性を見抜く目が妖怪並に鋭くてな。もし、ブランドン君があんたらの言う通り『暗い』奴だったら、ちゃんと俺にそう言ったはずだ。ま、言葉はもう少し選ぶだろうけど。語彙の乏しいあんたらと違って」
「一言多いってのが分からねえのか?」
「嫌味な野郎だな、さっさと結論を言え!」
「まだ分からないのか? テイタムお嬢ちゃんには『真面目で優しくていい人』だったブランドン君が、何であんたらには『葬式の参列者』みたいな暗い表情を向けてたのか。ここが肝心だぜ。ブランドン君を口説き落とす鍵はそこにある」
「?」
「?」
ギョロ目のベティとジト目のタルラは一分程黙って必死に考えた後、
「そうか、あいつロリコンだったんだ!」
「道理でアタシらみたいなイイ女に興味を示さない訳だ! 合点が行ったぜ!」
的外れかつ自分に都合のいい結論を自信満々に導き出した。
これには流石のエイジン先生もソファーから少しずり落ち、あっけにとられているアラン君の方を振り返って、
「だめだこりゃ」
と苦笑い。
ブッパッパ、ブッパ、ブッパッパー♪