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▼463▲ ならず者の集団に拉致された清純系ヒロイン扱い

 高級リムジンの胴体部は普通の座席が無く、前と側面と後にコの字に置かれた長いソファー、その反対側にバーカウンターという、ゆったり寛げる仕様になっており、実際ソファーの真ん中には既に寛ぎ切った様子の女が一人座っていた。


 その妙に目の据わった女は外のギョロ目女と同じギャング風の格好をしており、深く腰掛けているソファーの背もたれに両肘をどっかと置いて、大きく足を組んでいるその様子はどう見ても大事な客人を迎えるマナーに真っ向から反逆している。


 このジト目女はアラン君とエイジン先生が車内に乗り込んでも、偉そうな態勢のまま、


「そっちのイケメンはアタシの隣に座れ。あ、お前は車の一番後の端っこな」


 強制収容所の前で労働力か殺処分かを選別する役人の様に、二人が座る場所を無造作に振り分けた。


「おかまいなく。こっちのイケメンも俺と一緒にここへ座るから」


 そう言いながら、アラン君をジト目女からかばう様にして車の最後部に座ろうとするエイジン先生。


 ジト目女はソファーから身を起こすと、姿勢を低くしたままエイジン先生の正面までずかずかとやって来て、


「聞こえなかったか? そっちのイケメンはアタシの隣で、お前だけここに座るんだ!」


 懐から取り出した飛び出しナイフの刃を、エイジン先生の喉元に突き付けた。


 ちょうどその時、ギョロ目女も車に乗り込んでドアを閉めたので、窓がスモークガラスになっている車の内部は外から見えなくなってしまう。


「どうした、タルラ?」


 目の前の物騒な光景に、さして驚いた風もなく尋ねるギョロ目女。


「そのイケメンをあっちに連れてけ、ベティ。二人で念入りにおもてなししてやろうぜ。念入りに、な」


 ジト目のタルラがナイフをエイジン先生の喉元に突き付けたまま、ギョロ目のベティに指示を出す。


「気ぃ早過ぎ。まだ出発してねーだろ」


 外にいた時とは打って変わった乱暴な口調で答えるベティ。


「じゃ、早く行こうぜ。とっと車を出しな、ジーン!」


 タルラが運転席の方へ声を掛けると、


「おう!」


 ジーンと思しき女の運転手の荒っぽい返事が聞こえ、次の瞬間、車は急発進してガル家の屋敷を後にした。


「危ねえな! 刃物を人の首に当てたまま車を急に出すなよ!」


 その時の反動でソファーに、ドスン、と腰を落としてタルラのナイフから離れた後、抗議するエイジン先生。


「ケガしたくなかったら、アタシ達の指示には素直に従うんだね、お客様」


 ふてぶてしい表情でナイフを懐にしまうタルラ。


 狭い車内で睨み合うこの二人の横を、


「おら、イケメンのお兄さんはこっちだよ」


 ギョロ目のベティが怯えたアラン君の手をがっちりつかみ、グイグイと引っ張って前の方に移動する。


「ちょ、ちょっと、離してください!」


 抵抗空しく連行され、そのままソファーの指定位置に座らされるアラン君。すぐその両隣へギョロ目とジト目が挟み込む様に体を密着させて座り、


「アタシらはお客様を丁重におもてなしする様に言われてるのさ」

「リング家に着くまで時間はたっぷりあるから、目一杯楽しもうぜ」


 と迫った。


「おーい。俺のおもてなしは?」


 そんなならず者の集団に拉致された清純系ヒロイン扱いを見ながら、呑気に声を掛けるエイジン先生。


「カウンターに色々あるから、好きなモンを飲んでろ」


 嫌がるアラン君の太ももをいやらしい手つきで撫で回しながら、素っ気なく答えるタルラ。


「じゃ、遠慮なく」

「エイジン先生!」


 何事も無かった様にグラスへ手を伸ばすエイジン先生に、必死な表情で救いを求めるアラン君。


 アンヌから「変な女につかまらないでね」と言われた矢先に変な女二人につかまる、いつものアラン君。

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