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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ4△

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458/556

▼458▲ 出来高払いの悪徳結婚相談所

「つまりリング家に娘を嫁がせる、というのは、娘を人里離れた森の奥に生贄に差し出すのとほぼ同じです。いかに政略結婚とはいえ、可愛い娘にそんな事はさせたくない、と躊躇するのも無理はありません」


 娘を嫁に出す際の親心を説くテイタム。一応まだ九歳。


「昔話の『しっぺい太郎』に出て来る猿かよ。えらく嫌われてるな、リング家。でも政界に影響力を持つ程の名家なら、娘の一人や二人、喜んで差し出す親だっているだろうに」


 同じく娘を嫁に出す際の親心を説くエイジン先生。ただし邪悪な打算の観点から。


「その場合、どうしても『差し出しても構わない』娘が選ばれますね。そんな娘を差し出される方の身にもなってください」


「クーリングオフ対象だな。『いらんわ、こんな不良品』とそのまま返品だ」


 よその家の結婚事情に関して失礼にも程がある事を言い合うテイタムとエイジン。


「そういう事情もあって、これまでブランドンさんの婚約話は中々まとまらなかったのですが、最近になって、『早く後継ぎの孫娘を用意しなくては』と焦る気持ちがヴィヴィアンさんの中で強くなった様です。『この際、孫娘さえ産んでくれればどんな女でも構わない』という位に」


「ブランドン君にとってはいい迷惑だ。女というよりクリーチャーといった方が早い奴を押しつけられた日にゃ、思わず『チェンジ!』と叫んだりしてな」


「六回チェンジするとヤクザが来る、って本当なんでしょうか。それはともかく、結婚に後向きなブランドンさんをどうすればその気にさせられるか、という悩みをヴィヴィアンさんは知人に相談し始めました。それを人づてに聞きつけたウチの父が、『それなら、私がいいカウンセラーを知ってますよ!』、としゃしゃり出たのです」


「そのカウンセラーってのは、もしかして」


「はい、エイジンさんの事です。先日のジェーンの一件で、父はエイジンさんのことを高く買っていますから」


 にっこり笑って言い切るテイタム。


「確かに文字通り高く買ってくれたよな、二千万円で。お嬢ちゃんの口添えもあっての事だったが。で今、その二千万円分、俺に働けと?」


「いえ、タダでとは言いません。引き受けて下さるなら、依頼の件の成否を問わず、とりあえず日本円で百万円支払う、とヴィヴィアンさんは仰ってます」

「よし、引き受けた」


 あっさり承諾するエイジン先生。


「ありがとうございます。これで父のメンツも一応保たれます。『不埒な目的の為に、ありもしない話をでっち上げてこのリング家に乗り込んで来たな!』、とヴィヴィアンさんを怒らせずに済みそうです。政治家としてはなるべく有力者を敵に回したくはありませんから」


「逆にこの話が上手く行けば有力者とのコネが出来るしな。親父さんだけでなく、いずれお嬢ちゃんが大きくなった時、それは有利に働くに違いない」


「その通りです。そんな訳で、グレタさん、イングリッドさん。すみませんが大体三日から一週間ほど、エイジンさんをお借りしてもいいですか? いずれお二人と結婚してフナコシ家を創設する事を考えれば、この機会にエイジンさんが有力者であるリング家とコネを作っておくのも、非常にいいお話だと思うのですが」


 にっこりと笑ってポンコツ主従にお願いするテイタム。


「もちろん構わないわよ!」

「いってらっしゃいませ、エイジン先生!」


 自分達の最大の関心事である将来の結婚のビジョンを絡められたせいか、一も二も無く承諾するグレタとイングリッド。


「流石政治家の娘。人心掌握術に長けてるな」


 そんなポンコツ主従の同意を引き出したテイタムに改めて感服しつつ、


「だが、分かってると思うが上手く行くとは限らないぜ。お家の都合ってだけで、まだ十七歳の少年を結婚する気にさせるってのは至難の業だし、俺としてもあまり気が乗らん」


 一応釘を刺しておくエイジン先生。


「ヴィヴィアンさんは、さっきお話しした無条件の百万円の他、『ブランドンさんが婚約したら』一千万円、『ブランドンさんが結婚したら』さらに一千万円、『ブランドンさんに娘が出来たら』さらに三千万円のご祝儀を出してくださるそうです」

「よっしゃ! 『出来ちゃった婚で娘が出来たら』、最短コースで計五千万円だな!」


 刺した釘を引っこ抜いて、代わりに邪な打算で埋めるエイジン先生。


 それを聞いてにっこりと笑う、人心掌握術に長けたテイタム。九歳。

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