▼450▲ 銀河と鉄道とおねとショタとネジ
その後も「真面目に評価する気ないだろお前」と言いたくなる様なふざけた感想の数々を口にして怒りのハリセンを食らうものの、時々「よくそこまで読み込んでくれたなあ」と言いたくなる様なちょっとした所を褒めて喜ばせてやり、グレタのノベルゲー制作へのモチベーションを下げない様に巧妙な心理操作を試みるエイジン先生。もっともクリエイターなどその作品を褒めてやればチョロいもんであるが。
やがて夕方になり、アンヌをインストラクターに迎えて本当の格闘トレーニングに移行したグレタを稽古場に残し、小屋に戻って来たエイジンを、
「おかえりなさいませ、エイジン先生」
いつもかけているメガネを外して代わりに妙に外側に飛び出た長いつけまつげを装着し、膝下まであるロングの金髪のヅラとその上に黒い大きな毛皮のコサック帽子を被り、胸元に玉飾りが付いた結び紐を垂らした黒いモフモフのケープ付きファーコートに黒いブーツといういでたちのイングリッドが出迎えた。
「ただいま。見事に黒ずくめだな。誰か身内に不幸でもあったのか? 俺達の事は構わないから、すぐに行ってやれ。こういう事は早い方がいい」
そう言って、その念入りなコスプレに対してスルーを決め込み、横を通り抜けようとするエイジン先生。
「身内の不幸ではありません。これからエイジン先生と二人で銀河を走る超特急に乗って機械の体をもらう旅に出るのです」
それを通せんぼして引き留め、訳の分からない事を言い出すイングリッド。
「いらん。俺の体はどこも悪くない。あんただけ行って、そのポンコツな頭の中身を取り替えて来い」
「エイジン先生のへらず口を機械化して、素直な事を言える様にする方が先です」
「分かったから通せ。そのコスプレのキャラは有名な分、色々扱いが難しいんだ」
「私はイングリッド……危ないネタも平然と使う女……」
「やかましい」
「ちなみに、このコートの下は原作通り全裸です」
「いや、あのコートの下は永遠の謎だろう。どこかのエロ同人と間違えてないか?」
「これがほんとうの私よ!」
「突然コートの前をはだけるな。ただの露出狂にしか見えん」
痴女メイドの脇をすり抜けて寝室へ向かうエイジン先生。途中でふと振り向いて、
「そのコスプレから推測するに、今日のおやつはラーメン関連か?」
と尋ねると、
「ハズレです。正解は『ネジの形をしたチョコ』でした」
してやったり、といった感じのドヤ顔で答える痴女メイド。
「参った。それにしても、毎度毎度よく考えるな」
敗北を認めつつ、再び寝室へ向かうエイジン先生。
イングリッドは何も言わない。




