▼443▲ 着信拒否される犬猫と悪役令嬢のランク付け
大人しく留守番が出来ず、いちいち連絡を入れて鳴きまくる落ち着きのない犬と猫、もといグレタとイングリッドに対し、
「よし、一時的にあの二人を着信拒否、と」
淡々と携帯を操作するエイジン先生を見ながら、
「いくら愛されてるからって、そんなに冷たくあしらっちゃダメよ。女の人の言い分をちゃんと聞いてあげるのが男の人の役目じゃない」
着拒された哀れな二人を気遣うと見せかけて、単に面白がっているだけのマリリン。
「大丈夫、あの二人の言い分はいつもちゃんと聞き流してやってるから」
「うふふ、そんな事言って大丈夫? エイジンさんの発言は全部向こうに筒抜けなのに」
「これも修行さ。修行が終わらない内は、危なっかし過ぎてあんたと話をさせる訳にゃいかん。あんたみたいな知恵の回る愉快犯と渡り合うにはささいな事でカーッとする様じゃダメだ。さっきも言ったが、いいオモチャにされちまうからな」
「まあ、ひどい言いがかりね。オモチャになんかしないわよ。いつかぜひ遊びに来てちょうだいね、グレタさんとそのメイドさん」
さながら手に取ったお人形さんに話しかける無邪気な女児の様に、オモチャにする気満々の笑顔でウェブカメラの向こうのポンコツ主従に話しかけるマリリン。
その後、エイジン先生は派遣されて来た家庭教師よろしくマンツーマンでマリリン相手に今回の事件の発端から解決まで巧みな話術で解説し、全てを語り終えた時にはもう夜が白々と明けていた。
「――そんな訳で、家出した二人のお嬢ちゃんは無事家に戻り、俺の懐には四千万円が入り、協力してくれたあんたも退屈を紛らわす事が出来て、誰も損する事なく皆幸せに八方丸く収まりましたとさ。めでたしめでたし」
自分の詐欺行為をいい話風に正当化して長い話を締めくくるエイジン先生。
「うふふ、とても面白かったわ、エイジンさん。また可愛い小学生の女の子を誘拐する時は協力させてね」
無邪気な笑顔で不穏極まりない事を言うマリリン。
「誤解を招く言い方はやめてくれ。今回は成り行き上そうなっただけの話で、俺にそんな趣味は無い」
「あら、残念。でも、そのテイタムっていう九歳の女の子には私も興味を惹かれたわ。とっても頭がよくって、行動力もあるじゃない」
「テイタムお嬢ちゃんならあんたと直接会わせても大丈夫だな。ウチのポンコツ共と違って知恵と自制心を備えたスーパーちびっ子だから、あんたの遊び相手としても十分務まるだろう」
「いいわね。いつか一緒に何かゲームでもしたいわ」
「ただし俺の時みたいに、強引に拉致って無茶なデスゲームを仕掛けるなよ」
「まあ、どうして?」
本当に何がいけないのか分からない、と言いたげな笑顔で問うマリリンに対し、
「あんたじゃ勝てないからさ。俺の見る限り、頭脳派悪役令嬢としてのテイタムお嬢ちゃんは化け物クラスだぜ」
九歳の女の子を評するにはちょっとひどい言い方をするエイジン先生。




