▼437▲ 解析はやたらと速いが計算結果がやたらと邪悪なアルゴリズム
「ま、そんな具合にテイタムお嬢ちゃんがジェーンお嬢ちゃんの為に立案して実行した家出計画を、俺が途中から狂言誘拐として引き継いで完遂した、ってのが今回の事件の大まかな全貌だ。他に詳しく知りたい事があれば、後でテイタムお嬢ちゃんに聞くといい。俺からの説明はこの位にしとくよ」
九歳の子供に丸投げする形で話をまとめるエイジン先生。
「概ね了解した。私としても余計な軋轢を回避する為に、君がレンダ家に説明した以上の事は知らない、というスタンスで行こうと思う」
しょうもないエロオヤジから抜け目のない政治家モードに戻って答えるライアン。
「色々とご協力ありがとうございました、エイジンさん。最後に、二つ質問してもいいですか?」
九歳の子供らしく軽く微笑んで尋ねるテイタム。
「ああ、いいよ。何が聞きたい?」
「まず第一に、エイジンさんはいつ頃から私がジェーンを騙している事に気付いてましたか?」
「ガレージでお嬢ちゃん達と再会した時だ。あの時、ジェーンお嬢ちゃんの方はやたらパニくってたのに、君はやたら落ち着いてただろ? それと昼間に遊園地でお嬢ちゃん達がバンジージャンプをしていた時の光景を重ね合わせて、『こっちの小さい子が、こっちの大きい子をそれとなく誘導しているな』と気が付いた」
「バンジージャンプ、ですか?」
「飛ぶ直前で足がすくんで動けなくなったジェーンお嬢ちゃんを、君が下から声を掛けて勇気付けていたじゃないか。あの光景は今回の事件における二人の関係を如実に表してたよ」
「あの一瞬でそこまで見抜いていたんですね、すごい洞察力です。では第二の質問ですが、エイジンさんは私達を匿ってくださると決めた時には既に、この家出事件の落とし所もちゃんと計算されていましたか?」
「ああ、二人の親御さんから二千万円ずつ頂く事によって万事丸く収まるという計算結果を出してたぜ!」
子供達の力になってあげたいという動機はともかく、実際にやった事はただの営利誘拐犯と変わらないエイジン先生。




