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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ3△ 古武術詐欺師は悪役令嬢を巻き込んで今日もよからぬ事を企む

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427/556

▼427▲ 政治家とその秘書によるあるしょうもない愛の詩

「前半戦は無事終わりましたが、まだ後半戦が残ってるのかと思うと、ちょっと気が滅入ります。車の中でエイジン先生を待っている間、また向こうのお屋敷の使用人の方々から怪訝な目で監視されるかと思うと」


 ニールキック家へテイタムを送り届けるべく車を走らせつつ、苦笑交じりにため息をつくアラン。


「大丈夫、前半戦より後半戦の方がずっと早く済む予定だ」


 その隣で何の罪悪感もなく犯行を予告するエイジン先生。


「そんなに上手く行きますかね?」


「レンダ家が俺に金を支払ってしまった今、ニールキック家もそれに倣うしかないのさ。そうしないと両家の間に不和が生じるからな。『俺の所は二千万円も支払ったのに、お前の所はタダなんて、そんな不公平な話があるか!』って具合だ」


「ああ、確かに」


「それにテイタムお嬢ちゃんのお父さんは政治家だぜ。いっぱしの政治家なら、ポン、と支払っておいて、『いやあ、ウチもやられましたよ。お互い災難でしたねえ』とか言って、『同じ被害に遭った者同士の連帯感で、レンダ家との絆をより強固に出来る』と、逆に利用する位に頭は回るはずだ。こんな絶好のチャンスに二千万円ぽっちを惜しむ訳がない。そうだろ、お嬢ちゃん?」


 まるで明日の天気の話でもしているかの様な呑気な口調で、後部座席のテイタムに尋ねるエイジン先生。


「はい。でもジェーンのお父様が支払う支払わないに拘わらず、ウチの父は必ずエイジンさんに二千万円をお支払いします」


 まるで明日の天気の話でもしているかの様な呑気な口調で答えるテイタム。


「ほう、そりゃ、ありがたいね」


 満足げに微笑むエイジン先生。


「それに車で待っている間、ジェーンの所の様な監視は付きませんから、アランさんも安心してください」


「だといいんですが」


 九歳の子供に慰められるアラン君。


 そうこうする内に車がニールキック家に到着し、レンダ家程ではないがそこそこ広い庭の中を通って、大小様々な箱を積んで作った様なモダンな感じの屋敷の前までやって来ると、正面玄関には若いメイドが一人しかおらず、


「なるほど、お嬢ちゃんの言った通りだな。これならアラン君も安心だろ」


「ええ。犯罪者扱いはもうこりごりですよ」


 心底ほっとした様子のアラン君。


「油断させておいて、いきなりあの辺の茂みの中から警官がわらわら出て来たりしてな。一応、俺達は犯罪者だし」


「勘弁してください」


「冗談だ。じゃ、行って来るぜ。二人はここで待っててくれ」


 そう言ってアランとテイタムを車に残し、ブリーフケースを持って悠々と車から降りたエイジン先生を、

 

「ようこそおいでくださいました、エイジン・フナコシ様。ご案内させて頂きますので、どうぞこちらに」


 メイドは特に犯罪者に向ける様な怪訝な目でなく、普通に愛想のいい笑顔で出迎えてくれた。


「よろしくお願いします。テイタムお嬢様をそちらへお引き渡しするのは、お父様とのお話が済んでから、という事でよろしいですね?」


「はい、その様に伺っております」

 

 仮にも誘拐されたお嬢様が帰って来たんだからもっと心配した方がいいんじゃないか、と言いたくなる位あっさりとした態度のメイドに案内され、エイジン先生は応接室の前までやって来る。

 

 メイドがドアをノックし、


「エイジン・フナコシ様をお連れしました」


 と声を掛けると、


「あ、ちょっと待ってくれ」


 中からあわてた様な男の声がして、やや間を置いてから、


「どうぞお入りください、エイジン様」


 スタイルのいい体に紺スーツ姿でロングヘアーの、秘書と思しき二十代半ば位の美女がドアを開けてくれた。


 よく見ると白いブラウスの胸元が少しはだけていたが、それに気付かぬフリをしてエイジン先生が部屋に入ると、


「やあ、初めまして、エイジンさん! テイタムの父、ライアン・ニールキックです! ウチの娘が随分お世話になった様だね、感謝するよ!」


 ややクセのある茶がかった金髪で、口ひげを生やした三十代後半位の快活な男が、「ようこそ」とばかりに両手を広げ、テンション高めな歓迎の意を表していた。


 しかし、その頬にはくっきりと赤いキスマークが付いており、


「……お忙しい所をお邪魔して、どうもすみません」


 この「突っ込んだら負け」な状況に、流石のエイジン先生もちょっと戸惑い気味だった。

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