表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ3△ 古武術詐欺師は悪役令嬢を巻き込んで今日もよからぬ事を企む

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

407/556

▼407▲ 居留守を使う債務者をドア越しに追い詰めるヤミ金の取り立て

「覚悟も何も、俺達はお嬢ちゃん達がどこにいるかすら、全く見当が付かないんだが?」


 最後通牒を突きつけられてもなお、顔色一つ変えずにしらばっくれるエイジン先生。


 そんなエイジン先生の嘘八百には取り合わず、


「ジェーンお嬢様、テイタムお嬢様、そこに隠れているのは分かってるんです。今、あたしがエイジンさんに言った事、全部聞こえてましたよねえ?」


 その背後の少し離れた場所にあるキャンピングカーに向かって、ピーターは声を張り上げる。


「いや、だからいないっての」


 舞い上がった埃を払う様に胸の前で手をワイパーの様に振って、平然とシラを切るエイジン先生。


 そんなゼスチャーを無視して、隠れている二人の子供に対し、大声で呼び掛けを続けるピーター。


「この三日間、あなた達は、そりゃあ楽しかったでしょう。窮屈なお稽古事からも学校からも家からも逃げ出して、自由奔放に遊び回ってたんですからねえ。でも、そんなあなた達を心の底から心配している親御さんや、不眠不休で捜索に当たっている人達の事を考えてみてください。あなた達が楽しんでいる分、彼らはものすごく苦しんでいるんですよ!


「それもこれも全部、あなた達のせいだ。あなた達のワガママのせいで、彼らはこんな意味のない事件に振り回されているんです。申し訳ないとは思わないんですか?


「あなた達が、これ以上この自分勝手な家出を続けるというのであれば、あたしも警察に通報せざるを得ません。その結果、味方になってくれた優しいエイジンさん達が、あなた達のせいで逮捕されてもいいんですか?


「二人共子供とはいえ、やっていい事と悪い事の判断は十分に出来る年齢のはずです。よーく考えてください。自分がやらなくちゃいけない事は何なのかを!


「今すぐ、そのキャンピングカーを降りて家に帰るというのであれば、あたしも警察には通報しません。この事件はここで終わりにして、エイジンさん達がやった事も咎めるつもりはありません。


「大切な人達にこれ以上迷惑をかけたくないのなら、二人共、今すぐその車から出て来なさい!」


 普段のもっさりした喋り方とは打って変わって、厳しい口調で声を荒げるピーター。


 キャンピングカーの中でそれを聞いていたジェーンは真っ青になって、


「どうしよう?」


 声には出さないが、怯えた目で隣に座るテイタムに問いかける。


 それに対して首を横に振り、


「絶対、車から出ちゃダメ!」


 同じく声には出さないが、強い意志を持った目でジェーンを制するテイタム。


 そんな二人が座っているソファーの傍らでは、毛を逆立て「シャーッ!」と威嚇して子猫を守ろうとする母猫よろしく、グレタがキッチンスペースから持ち出したフライパンを片手に仁王立ちして、


「この二人の子供に手を出す奴ァ、脳天カチ割ったる!」


 と言わんばかりに、殺気のこもった視線でリビングスペースの入口を睨んでいた。


 そんな不穏な車内の様子とは裏腹に、外のエイジン先生は、


「あんた、さっきから一体何と戦ってるんだよ。って言うか、そこにいもしないお嬢様達に向かって声を張り上げてるのを見てたら、こっちが心配になって来たわ。悪い事言わんから、一度心療内科で診てもらえ、な?」


 おどけた口調でピーターを揶揄していた。


「ご心配なく。あたしは正常です。心配すべきなのは、むしろあなたの方ですよ、エイジンさん。このバカげた狂言誘拐の首謀者は、他ならぬあなたでしょうからねえ」


 真面目な表情で真相を喝破するピーター。


「温厚な俺でもしまいにゃ怒るぞ。あんたの電波な妄想に基づいて警察をガル家に差し向けるつもりなら、ガル家はレンダ家を逆に訴えてやる。あんた一人のクビが飛ぶ位じゃ済まなくなるぜ」


 真面目くさった表情で図々しいにも程がある事を言い出すエイジン先生。


「ええ、よござんすよ。明日の正午までに、ジェーンお嬢様とテイタムお嬢様をこちらに帰さない場合は、そちらに令状を持った警察が急行する事になります。いいですか、タイムリミットは明日の正午です」


 ピーターは再びエイジンの背後のキャンピングカーの方に向かって、


「ジェーンお嬢様、テイタムお嬢様、今の話を聞いてましたね? 明日の正午きっかりに警察に通報します。危険を顧みずあなた達の力になってくれた親切な人達へ、恩を仇で返す様な真似をしたくなければ、それまでに帰って来なさい!」


 と、念を押してから、


「明日の正午までに気が変わったら連絡をください、エイジンさん」


 と、言い残して、踵を返してポンコツ車に戻り、既に後部座席に乗り込んで眠っていたナスターシャと共に、その場から去って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ