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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ3△ 古武術詐欺師は悪役令嬢を巻き込んで今日もよからぬ事を企む

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▼399▲ 休日出勤で寝不足なOLが眠りこける空いている事だけが救いの朝の電車

 結局ピーターの提案に従い、○×クイズで海中に沈められそうなポンコツ車の後に続いて、エイジン先生が再び乗り込んだ巨大な豪華キャンピングカーも廃工場の駐車場へと移動し、それぞれ少し離れて停車した。


 エイジン先生は、キャンピングカー内のソファーに寄り添って座るジェーンとテイタムに、


「俺が戻るまで、ここで声を立てずに気配を殺して待っていてくれ」


 と言い含め、二人の子供達もこれに無言で頷く。


 それからグレタの方に向き直り、


「ピーターのオッサンが外から色々と挑発して来るだろうが、絶対に相手にするな。ただ、俺からあんたへの呼び掛けには答えてもいい。どっちにしろ、ドアを開けるのと外に出るのは厳禁だ」


 と念を押すエイジン先生。


「分かったわ」


 了承して、二人の子供の傍らに立つグレタ。その姿は幼い妹達を守ろうとする実のお姉さんの様。


 そんな三令嬢をリビングスペースに残して前方へ移動し、


「俺が降りたら車のドアを全部ロックして、戻って来るまで絶対に解除するな。場合によっては、俺がピーターのオッサンを羽交い絞めにしてる間に、車を発進させて屋敷へ戻れ。その時は合図するから」


 運転席のイングリッドに物騒な事を指示するエイジン先生。


「分かりました。必要とあれば、ピーター様を車で轢く事も辞しません」


 もっと物騒な事を真顔で提案するイングリッド。


「いや、そこまでやらなくていいから」


 物騒なイングリッドを残し、助手席側のドアからエイジン先生が地面に降り立つと、背後で、ガチャ、とドアがロックされる音が響く。


 既にポンコツ車から降りていたピーターが、


「ご協力ありがとうございます、エイジンさん。ここなら他に誰もいませんから、お互いに腹を割って話が出来ます」


 そう言って、ゆっくりと近付いて来た。


「他の捜索員は連れて来なかったのか?」


 エイジンが問う。


「はい。捜索本部も、あたしがここに来ている事は知りません」


「完全に単独行動か。で、話ってのは?」


「単刀直入に言いましょう。ジェーンお嬢様とテイタムお嬢様を、こちらに返してください」


 立ち止まり、エイジンと真正面から向き合うピーター。


「返すも何も、居場所すら知らないんだが」


「とぼけても無駄ですよ。今までずっと、あなたが二人を匿っていたのは分かってるんです」


「証拠は?」


「正に今、あたしの目の前にあります」


 ピーターはにやりと笑って、エイジンの背後のキャンピングカーを指差し、


「この首を賭けたっていい。今、お嬢様達はあの車の中にいます。ドアを開けて中を見せてもらえれば、それでこのバカげた騒ぎもおしまいです」


 と断言した。


「あんたの首なんかもらったってしょうがねえよ。それに証拠じゃなくて、ただの妄想じゃねえか」


 全く動じる様子もなく言い返すエイジン先生。


「あたしの言ってる事に根拠がない、と仰るんですか?」


「ああ。実際、中にはウチのお嬢様とそのメイドしか乗ってないし」


「じゃあ、根拠をお見せしましょう」


 ピーターは自分のポンコツ車の方を振り返り、


「お願いします。ナスターシャさん!」


 と呼び掛けた。


 しかし、何も起こらない。


 仕方なくピーターは、ポンコツ車に戻ってドアを開け、


「お疲れの所すいません、ナスターシャさん。例のやつをお願い出来ませんか?」


「……ん? あ、すいません、ピーターさん……すぐ降りますから」


 しばらくすると、後部座席で寝ていたと思しき人形使いのナスターシャが、フラフラしながら車を降りて来た。


「あ、おはようございます、エイジンさん」


 相変わらず、その美しくも眠そうな顔で天然ボケをかます黒ローブ姿のナスターシャ。


「もうとっくに昼過ぎだよ。ってか、あんたも一緒だったのか。道理でこのオッサンが葉巻を吸ってない訳だ」


 ちょっと呆れた後、


「でもあんた、今日休みだって言ってなかったか? 貴重なオフだってのに、またこのオッサンに引っ張り出されたのかよ。しまいにゃ過労で倒れるぞ」


 同情するエイジン先生。


「いえ、私も子供達に夢を与える仕事をしている以上、誘拐事件の捜査に協力するのは当然です」


 いい事を言っている様で、どこかズレている感のあるナスターシャだった。


 脳を正しく働かせる為には、やはり十分な睡眠が必要なのである。

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