▼393▲ 着ぐるみパジャマが精神面に及ぼす影響
「では、そろそろエイジン先生もお風呂へどうぞ。私はその間に、明日の手配を済ませておきます」
ポンコツメイドから有能メイドに戻るイングリッド。
「よろしく頼む。風呂掃除は俺がやっておこうか?」
そんな有能メイドを気遣うエイジン先生。
「いえ、後で私が全部やりますので、口先だけが達者なトーシロは、何もせずにゆっくり湯に浸かってください」
「ひでえ言い草だな。まあ、ありがたいけどさ」
「くれぐれもゆっくりと浸かってくださいね。途中、私達四人で覗きに行く都合もありますので」
「来るな。ってか、子供達に何をさせようとしてるんだよ、あんたは」
「実物の教材を使った保健体育の講義を」
「やかましい」
油断するとすぐポンコツへ戻ってしまうメイドに一応ツッコんでおいてから、この一連のやり取りを笑って見ていたジェーン十二歳とテイタム九歳の方を向き、
「ダメイドの言う事を聞いちゃダメだぞ、お嬢ちゃん達。それと、明日に備えて早く寝てくれ」
と念を押し、バスルームに向かうエイジン先生。
風呂を終え、皆とお揃いの三毛猫着ぐるみパジャマに着替えてリビングに戻ると、この二匹の女子小学生はエイジンの言う事を完全にスルーして、グレタ、イングリッドと楽しそうにお喋りに興じていた。
「あんたら、わざとやってるだろ」
「少し位、夜ふかししたっていいじゃない。それと、今晩は四人一緒に寝るんだけど、エイジンも一緒にどう?」
まったく悪びれずに、ニヤニヤしながら逆にエイジンを誘うグレタ。普段おちょくられている分、ここぞとばかりにお返ししたいのが丸分かりである。
「遠慮しておく。まあ、俺の寝室のベッドなら五人乗っても大丈夫だろうが。ともかく、俺はイングリッドの寝室で寝るから、あんたらも早く寝ろよ」
そう言ってリビングを出て行くエイジン先生の後から、ぞろぞろついてくる四匹の女共。
「母猫の後追いをする子猫か、あんたら」
「にゃー」
「にゃー」
「にゃー」
「にゃー」
ふざけてにゃーにゃー鳴きまくる女共の内、でかい二匹の首根っこをつかんで、大きなベッドがある方の寝室へ誘導するエイジン先生。後からちっちゃい二匹もちゃんとついて来る。
「あ、そう言えば、イングリッドは風呂掃除があるんだったな」
ドアの前で気付いて、ダメイドを解放しようとすると、
「このまま連れて行ってください。エイジン先生に首根っこをつかまれて連行されるのが、最近のマイブームなもので」
ダメイドは逆に連行を望む始末。
「いいか、お嬢ちゃん達。こういうダメな大人になっちゃいけないぞ」
ため息を一つついてから、ジェーンとテイタムに教育的指導を行うエイジン先生。
「にゃっ」
「にゃっ」
そんなエイジンを無視して、イングリッドの腰にしがみつくお嬢ちゃん達。
もう色々と手遅れかもしれない。




