▼392▲ マジックミラーと聞いて真っ先に連想する車
エイジン先生がアランとアンヌの不安をいたずらに煽っている所へ、風呂から出たグレタ、イングリッド、ジェーン、テイタムが、お揃いの三毛猫着ぐるみパジャマ姿でリビングに戻って来た。
「じゃあ、今日もお嬢ちゃん達の近況報告用の写真を撮ろうか」
昨晩同様、手書きのフリップをジェーンに、日付確認用の夕刊をテイタムに、それぞれ持たせ、
「はい、二人共、スマイルスマイル! 可愛く! あざとく首を傾げて! 本物の子猫になったつもりで!」
女子小学生を思いのままに操りながら撮影にいそしむエイジン先生。
果ては、グレタとイングリッドを加えて四人一緒の写真まで撮り始め、
「間違っても、この写真を送らない様にしてくださいね、エイジン先生。一発でアウトですから」
アラン君を無駄にハラハラさせる。
「大丈夫。大金の懸った大勝負でそんなヘマはしねえよ。手紙を届ける前にマリリン嬢のチェックも入るし」
「そう言えば、もうピーターさんには、この脅迫状を仲介してくれる第三者の存在も見抜かれているんですよね。同じ手口を使うのは、マリリン嬢にとって危険じゃありませんか?」
「危険と言えば危険だが、マリリン嬢は危険であればある程ゲームを楽しめるタチだからちょうどいいんだ」
「その勝負度胸を少し分けて欲しいです……」
己の小心者ぶりを嘆くアラン君と、その手を無言でぎゅっと握るアンヌ。「私が付いてるから」と励まそうとしているのか、「マリリンには近付かないで!」と警戒しているのかは定かではないが。
撮影が終わり、このバカップルが手を握ったまま屋敷に戻ると、エイジン先生は、
「――ってな訳で、明日の行き先はライデル湖に決めた。イングリッド、途中で二回乗り換えるレンタカーの手配を頼めるか?」
明日の予定を皆に説明して、イングリッドに手配を頼み、
「かしこまりました、エイジン先生」
イングリッドはすぐにテーブルの上に置いてあるノートパソコンへと向かう。
「一台目のレンタカーは何でもいいが、二台目は大きなキャンピングカーを頼む。クレーン車を運転出来る位だから、大型免許は持ってるよな?」
「はい。どんなキャンピングカーにも対応出来ます」
こういう所だけ見ると、実に有能で頼もしいメイドであるが、
「じゃ、せっかくだから、一番豪華なキャンピングカーで行こう」
「では、壁がマジックミラーになっている車を手配しましょう」
「いや、そこまで特殊なのはいらないから」
「AVではお馴染みのキャンピングカーですが。アレに一度位乗ってみたいと思った事はありませんか、エイジン先生?」
「やかましい」
こういう所だけ見ると、実に残念でポンコツなメイドである。




