▼389▲ 池や沼の水を全部抜いた時に出て来る放送出来ない位ヤバい代物
「明日行く場所としてボート遊びが出来る湖を選んだのは、他にも理由がある」
エイジン先生はそう言って、ジェーンとテイタムに、
「昨日、お嬢ちゃん達が遊園地の駐車場で俺達の車のトランクに潜り込んだ時、キーを開けるのに使った『リレーアタック』の二つの機械なんだが、一方は観覧車のバカップルの荷物に放り込んだからいいとして、もう一方は今どこにある?」
と尋ね、
「イングリッドさんの寝室に置いてある、テイタムのバッグの中よ」
ジェーンの返答を聞いてから、
「やっぱりな。ここに来る途中で処分する暇は無かったもんな」
納得した様に頷いた。
「ここへ持って来ましょうか? エイジンさん」
エイジン先生に尋ねるテイタム。
「ああ、頼む。もちろん、電源は切ってあるな?」
「はい。本体からバッテリーを抜いた上で、アルミホイルでグルグル巻きにしてあります」
そう言ってテイタムは寝室に行くと、すぐに銀色に輝くアルミホイルに包まれた、黒板消し位の大きさの物体を手にして戻ってきた。
「アルミは電波を遮断するからな。だが、その機械は電波の遮断を無効化する魔法が発動してるんじゃなかったか?」
「大丈夫です。バッテリーが入ってなければその魔法も発動しません。アルミホイルを巻いたのは念の為です」
「うむ、用心に越した事はない。見事な逆探知封じだ、偉いぞ」
女子小学生の悪事を褒めるエイジン先生。
「ただ、もう一つの機械がないので、これだけ持っていても意味がありません。むしろ魔法犯罪の証拠物件なので、持っていない方がいい位の代物です」
「だよな。だから明日、俺達は湖でボート遊びをするんだ」
それを聞いたテイタムは、にこっと笑い、
「湖にこれを捨てに行くんですね、エイジンさん?」
エイジン先生の謎かけを無邪気かつ見事に解いて見せた。
「そう、湖の一番深そうな所までボートを漕いで、『うっかりお弁当の包みを落としちゃいました、てへっ』な態を装ってな」
笑顔で解説するエイジン先生。
「でも、後でピーターさんがダイバーを使って、これを見つけるかもしれませんよ?」
「大丈夫。地味な色の布きれでくるめば、湖の底の泥にまぎれてそう簡単には見つからん。仮に見つけた所で、それが俺達が落とした物だとは証明出来ない」
「それもそうですね。ゴミの不法投棄はよくない事ですが」
「不法投棄じゃない。『うっかりお弁当の包みを落としちゃいました、てへっ』だ」
「『てへっ』ですね。それなら仕方ありません」
そんな風にエイジン先生と実に爽やかに巧妙な悪だくみを語り合うテイタムを見て、ちょっと引き気味な表情になるジェーン。
例えるなら、学生時代の友達と二十年ぶりに街中でばったり再会したら、相手が立派な暴力団の幹部になっていた時の様に。




