▼382▲ 異文化に対する誤解が招く悲劇もしくは大事な所がスースーする衣服
大人二人と女子小学生二人のバニーガール四人が仲良く寄り添っている写真を撮りながら、
「色々倫理的に問題がありそうだな、これ」
主に子供達の露出過多について危惧するエイジン先生。
「考え過ぎよ、エイジン。こんなの水着と変わらないじゃない」
黒いボディースーツの胸元を軽くつまみながら、反論するグレタ。
「グレタお嬢様の仰る通りです。それとも、エイジン先生の目には私達の裸が透けて見えるとでも仰りたいのですか? 着エロ動画みたいに?」
頭の後ろで両手を組み、誘惑する様に体を艶めかしくくねらせながら、真顔でアホな事を言うイングリッド。
「着エロ動画言うな。お嬢ちゃん達が引くような発言は控えろと」
そんなエイジン先生の心配をよそに、ジェーンとテイタムはさほど気にしている様子もなく、この大人三人のしょうもない掛け合いを見ながらウサ耳を揺らして笑っていた。慣れたらしい。
「次はエイジン先生も入れて皆で一緒に撮りましょう」
一通り撮影が終わった後、バニー姿のイングリッドがエイジンに提案する。
「俺の女装は子供に不評だからやめとけ」
「いえ、もちろん嫌がるエイジン先生を無理やり女装させるのも楽しいのですが」
「おい」
「今回はエイジン先生の世界の伝統衣装をご用意致しました。これならお嬢様方も大丈夫でしょう」
そう言ってイングリッドは持参した紙袋から、濃紺地に色の薄い直線が入った柄の男物の浴衣を取り出した。バニーガールと浴衣の取り合わせは非常に違和感がある。
「ああ、浴衣か。なら、大丈夫。あんた達の分もあるのか?」
「もちろんございます。皆で浴衣を着て、ちょっとした夏祭り気分を味わいましょう」
「かなり季節外れだけどな」
「成人向け漫画の夏祭りと言えば、神社の裏手の林の木に両手をついた浴衣姿の女の後ろから男が立ちバックで」
「さ、そうと決まれば着替えた着替えた! 女物の浴衣は男物より着るのがちょっと面倒だぞ!」
子供の教育上よろしくない事を解説し出したダメイドバニーの首根っこをつかんで連行しつつ、グレタ、ジェーン、テイタムを更衣室に追い立てるエイジン先生。
女四人を更衣室に放り込んだ後、一人撮影場所に戻り、ちゃっちゃと浴衣に着替え終えたエイジンが待っていると、しばらくして、
「お待たせ! どう、エイジン?」
テンションが上がり過ぎて頭の中が夏祭り状態のグレタを先頭に、ジェーン、テイタム、イングリッドの順で、浴衣姿の四人が現れた。
各人の浴衣は、黒地に白い蜘蛛の巣模様に銀色の帯を締めているのがグレタ、白地に淡いピンクの花柄模様に濃いピンクの帯を締めているのがジェーン、黒白赤青黄のパズルの様な幾何学模様に白い帯を締めているのがテイタム、薄紫と白の草木の模様に同じ模様の帯を締めているのがイングリッド、となっている。
「皆似合ってるよ。観光で日本に来て、はしゃいでる外人さんみたいで」
エイジン先生の微妙なコメントに、
「褒められてるのか褒められてないのか、今一つ判断に苦しむわね」
ちょっとテンションを下げられてしまうグレタ。
「ちなみに、浴衣の下には下着を着けない、と聞きましたので、全員ノーブラノーパンです」
なぜか誇らしげに言うイングリッド。
「いや、普通下着は着けるからな。割と隙間あるし」
「え、そうなの?」
エイジン先生の衝撃の一言に驚いて顔を赤くするジェーン。
多分いつもより大事な所がスースーしている。




