▼380▲ 偉そうにふんぞり返る兄貴の野望を打ち砕く妹連合
帰宅早々、着替え中の女子小学生の下着姿を見たカドで嘘発見器にかけられて尋問されたエイジン先生は、ようやく疑いが晴れて遅い朝食にありつく前に、今朝屋敷にやって来たピーターとの会見の内容を皆に説明した。
「そんな訳で今日の夕方か夜に、またピーターのオッサンが人形使いを連れて屋敷にやって来る予定だ。屋敷の外に配置した五十体の人形を回収するっていう建前だが、実際の所はこちらにプレッシャーを与えつつ、別の罠を仕掛けて来る腹かもしれん」
うんざりした様子で言うエイジン先生。
「じゃあ、ジェーンとテイタムは、今日もこの小屋で大人しくしてた方がいいわね」
グレタが言う。
「ああ。だが、夕方までは大丈夫だ。昼食が済んだら、稽古場の方にこの子達を連れて行こう。イングリッドが小屋を掃除する都合とかもあるし」
「またスネーク?」
ジェーンがエイジンに尋ねる。
「またスネークだ。それと、その時はジャージに着替えた方がいいかもな」
「向こうで運動するの?」
「それでもいいが、女の子らしくお人形さん遊びなんかどうだ?」
「お人形さん遊びって、もうそんな年じゃないけど……テイタムはどう思う?」
「ちなみに、どんなお人形さん遊びですか?」
ジェーンの問いに答える前に、エイジン先生に確認するテイタム。
「百四十四分の一スケールの戦闘用ロボットのプラスチック製の人形を一から組み立てるんだ。部品はカラーリング済みで、組み立てに際して接着剤は不要、いわゆるパチ組みだ」
「それのどこが、女の子らしいお人形さん遊びなのよ! ただのプラモデルじゃない!」
嬉々として説明するエイジン先生に、すぐさまツッコミを入れるグレタ。
「でも、プラモ作りは結構楽しかっただろ?」
「エイジンと一緒に作ったから楽しかったの! 流石に一人で作る気にはならないわ!」
「だから、また一緒に作ろうぜ!」
「私はいいけど、男の子っぽい趣味にむりやり付き合わされる女の子の身にもなってみて!」
「じゃあ聞いてみようか。お嬢ちゃん達、こういうお人形さん遊びは嫌いか?」
聞くまでもなくちょっと遠慮したそうな表情のジェーンと、やや興味を示したテイタムが口を開く前に、
「ねえ、ジェーン、テイタム。ロボットのプラモデルを作らされるのと、倉庫から色々な服を持ち出してファッションショーをするのとでは、どちらがいいかしら?」
グレタがさらに問い、
「ファッションショーの方がいいわ!」
「ジェーンがいいのなら、私も」
「決まりね、エイジン?」
妹を自分の趣味にむりやり付き合わせようと企む自分勝手な兄貴の如きエイジン先生の野望は、多数決によりあっけなく潰された。戦いは数です、お兄ちゃん。




