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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ3△ 古武術詐欺師は悪役令嬢を巻き込んで今日もよからぬ事を企む

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▼379▲ なかなか口を割らない容疑者を自供に追い込む女子小学生

「イングリッド、次は私に質問させて! エイジンに色々聞きたい事があるの!」


「はい、どうぞお嬢様。この嘘つきを存分に問い詰めてやってください」


 質問者がイングリッドからグレタに交代し、


「だから、なんで俺がなかなか口を割らない容疑者みたいな扱いになってるんだよ」


 ポリグラフにかけられたままのエイジン容疑者の抗議を無視して、質問は続く。


「じゃあ、行くわよ。『本当はグレタの事が大好きだ』」


「いいえ」


 相変わらず素っ気なく答えるエイジン。針の動きにも全く変化は見られない。


「じゃあ、私の事嫌いなの!?」


 質問と言うよりは哀願と脅迫に近い調子で尋ねるグレタ。昼のドラマで捨てられそうになった女が涙目で男の胸倉をつかんでガクガク揺さぶりながらわめき散らす感じで。


「いいえ」


 そんな昼ドラをソファーに座ってつまらなそうに見ている主婦の様に、素っ気なく答えるエイジン。


 針に変化なし。


「一体、どっちなのよ!」

「いいえ」


 針に変化なし。


「エイジン!」

「お嬢様、エイジン先生に直接つかみかかるのはやめてください。ポリグラフの測定が出来なくなってしまいます」


 興奮の余りエイジンの胸倉をつかんでガクガク揺さぶり始めたグレタを、宥めて引きはがすイングリッド。もちろんその間、全ての針は滅茶苦茶に振れていた。


「落ち着け。これで『ポリグラフを用いた嘘発見器は信頼性に乏しい』、って事が実感出来ただろ? だからこの手の機械は、せいぜいお笑い番組でゲストに面白おかしい質問をぶつけて、そのリアクションを楽しむ位しか使い道がない」


 ソファーに座ったまま、しれっと解説するエイジン先生に対し、


「私の真剣な質問をお笑い番組と一緒にしないで!」


 興奮収まらぬ様子で食ってかかるグレタ。


「それ以前に、人をこんなポンコツ機械にかけて真剣な質問をする方が間違ってる。ところで、そこのお嬢ちゃん達、俺に何か質問したい事はないか? 何の役にも立たないお遊びだけどな!」


 一歩引いた所から見ていたジェーンとテイタムに話を振るエイジン先生。


「わ、私は遠慮するわ」


 アホな大人達の仲間に加わりたくなさそうなジェーンに対し、


「じゃあ、次は私に質問させてくれませんか、グレタさん?」


 アホな大人達をずっと冷静に観察していたテイタムが名乗りを上げた。


 その落ち着き払った態度に感化されたのか、グレタも幾分落ち着きを取り戻し、


「いいわ、交代しましょう。エイジンが困る様な質問をどんどんしてやって!」


 小学三年生の女の子に自らのリベンジを託した。


「お手柔らかに頼むぜ、テイタムお嬢ちゃん。出来ればこう、面白おかしくリアクションが返せる様な、しょうもない質問がいい。お笑い的に」


 ふざけた口調でリクエストするエイジン先生に対し、


「努力します」


 と真顔で答えてから、テイタムの質問が始まった。


「では行きます。『グレタさんは美人だと思う』」


「いいえ」


 相変わらず素っ気なく答えるエイジン。だが、針は大きく振れた。


「いい質問ね、テイタム!」


 一瞬で機嫌を直したグレタがテイタムの側に駆け寄り、その頭をよしよしとなでる。


「現金なやっちゃな」


 呆れるエイジン先生。


「では次、『イングリッドさんも美人だと思う』」


「いいえ」


 呆れ顔のまま淡々と答えるエイジン。しかし、針はさっきと同様に大きく振れる。


「おや? 嘘つきエイジン先生が、ちょっと素直になりましたね。尋問の才能がありますよ、テイタムお嬢様」


 針の動きを見ながら、テイタムの手腕を褒めたたえるイングリッド。


 しかし褒められても特に得意になる事もなく、テイタムは真顔のまま質問を続けた。


「では次、『グレタさんとイングリッドさんの事をいつも心配している』」


「いいえ」


 大きく針が振れる。


「いいわよ、テイタム! その調子!」

「なるほど。ストレートに恋愛感情を探るより、こうして搦め手で攻めた方がエイジン先生には効くのですね」


 はしゃぐグレタと、深く頷き感心するイングリッド。


「ああ、あんた達ポンコツ主従の事はいつも心配してるよ。主に頭とか」


 憎まれ口を叩くエイジン。


「では次、『お金より、グレタさんとイングリッドさんの方が大事だ』」


「いいえ」


 大きく針が振れる。


「エイジン!」

「やはり私達が見込んだお方ですね、エイジン先生」


 ニヤニヤしながら嬉しそうに言うポンコツ主従。


「でも報酬の二千万円はちゃんと払えよ、あんたら」


 あくまでも金にこだわるエイジン。


 そこでテイタムは一旦質問を中断し、


「さて、これでエイジンさんが、グレタさんとイングリッドさんを愛していらっしゃる事が証明されました」


「ちょっと待て、結論に対してデータが少な過ぎるぞ。どんな箇条書きマジックだ」


 一応ツッコミを入れておくエイジン。


「ここまでは軽いジャブです。次から、もっと突っ込んだ質問に入らせて頂きます」


「スルーかよ。しかもジャブて」


「行きます。『実は妹がいる』」


「いいえ」


 針が大きく振れる。


「『よく妹の面倒を見ていたので、子供の扱いは慣れている』」


「いいえ」


 針が大きく振れる。


「『困っている子供が助けを求めて来たら、放っては置けない』」 


「いいえ」


 針が大きく振れる。


「『よく妹の面倒を見ていたので、女の扱いも慣れている』」


「いいえ」


 針が大きく振れる。


「『必ず手に入れたいものは、最後まで人に知られたくない方だ』」


「いいえ」


 針が大きく振れる。


「質問は以上です。ありがとうございました、エイジンさん」


 ここで質問を打ち切るテイタムに対し、


「もっと質問して、テイタム!」

「私からもお願いします、テイタムお嬢様。手始めに、エイジン先生が今まで付き合った女の数を割り出してください」


 ポンコツ主従が自分達の興味丸出しで質問の続行を要求し、


「はいはい、嘘発見器ごっこはこれでおしまい! 面白かったかい、お嬢ちゃん?」


 そそくさと測定機器を外しにかかるエイジン先生。 


「はい、とても面白かったです」


 非常に満足した表情で答えるテイタム九歳だった。

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