▼377▲ 赴任したての若い男性教師にエッチなイタズラを仕掛けてからかおうとする女子校の悪しき伝統
倉庫から小屋に戻って来たエイジンがキッチンを覗いてみると、皆朝食を済ませたらしく、もうそこには誰もいなかった。
テーブルの上にはメモ用紙が一枚置いてあり、
「エイジン先生へ
お戻りになられましたら、お手数ですがリビングまで来てください。すぐに朝食をご用意いたします。
イングリッド」
と書かれている。
そのメモに従ってリビングに来てみると、当のイングリッドはグレタと一緒にジェーンとテイタムの服を脱がしている最中だった。上はジェーンがスポブラ、テイタムがキャミソールを着けており、下は共にパンツ一丁である。
「あ、すまん」
すぐに回れ右して出て行こうとするエイジン先生の背中へ、いつものメイド服姿のイングリッドが獲物を捕える鷹の如く素早く飛び掛かる。
「ノックもせずに女の子の着替えの最中に入って来るとは、見損ないましたよ、エイジン先生!」
「悪かった。だが普通、自宅のリビングに入るのにわざわざノックするか? ってか、何でここで着替えさせてるんだよ!」
「言い訳は聞きたくありません。ともかく、子供達の純真無垢な心を深く傷付けた事を反省してください!」
そう言って、イングリッドがエイジンの体をリビングの方にくるりと向けると、少し顔を赤くしているジェーンと顔色一つ変えないテイタムはどちらもまだ下着姿のままだった。下着を見られた事自体には、さほど傷付いてもいない様子。
「エイジン先生! 一度ならず、二度までも!」
「今のはあんたがやったんだろうが!」
リビングの入口で言い合いながらもつれ合うイングリッドとエイジン先生。
「そんなに小学生の女の子の着替えが見たかったの? そういう趣味なの、エイジン?」
冷ややかな口調で尋ねる、赤いドレス姿のグレタ。だがちょっと顔が笑っている。
「ねえよ! キッチンに置いてあったメモに、ここに来い、って書いてあったから来たんだ!」
「どうだか。イングリッド、この際、ハッキリさせておく必要があるわね!」
「はい。すぐに例の物を用意します、お嬢様!」
イングリッドはエイジンを解放してリビングから出て行くと、すぐに怪しげな機械をワゴンに乗せて戻って来た。なぜか白衣姿で。
「これは脈拍と発汗と血圧と呼吸の変化をモニターする『ポリグラフ』です。『嘘発見器』としても使えます」
「使えねえよ! 俺のいた世界だと、ポリグラフの結果は証拠として採用されないからな。信頼性が低過ぎて」
「エイジン先生には、今からこの嘘発見器にかかってもらいます。そこで私達が色々質問して、真の性癖を暴いて行くという趣向です」
「四半世紀位前のバラエティー番組であったな、そんなコーナー。俺がまだ生まれたか生まれて間もない頃の話だが」
「ともかく、これを指に、これを腕に、これを胴体にそれぞれ装着してソファーに座ってください、エイジン先生」
「いくらなんでも用意が良過ぎて、最初から仕組んでたのがバレバレだろ。もっと隠す努力をしろよ」
文句を言いつつ、ポリグラフ本体とケーブルで繋がった各種センサー部分を体の各部に装着しながら、元の服に着替え終えたジェーンとテイタムの方を向き、
「なあ、お嬢ちゃん達。大方このダメイドにそそのかされてアホな茶番に付き合ったんだろうが、アホな大人の言う事を聞いてると将来間違いなくアホになるから気を付けろ」
一応警告を与えるエイジン先生。
「えと、その……ごめんなさい。『玄関を開ける音が聞こえたら、服を脱いでスタンバイしてください』って……」
「すみませんでした。『エイジン先生とはいつもこんな風に遊んでいます』と、イングリッドさんに言われたものですから」
あっさり謝り、事情をバラす小学生二人。所詮は子供。
「素直でよろしい。さ、着けたぞ」
センサー部分を全て装着し、ソファーに深く座るエイジン先生。
「結構です。では、今からエイジン先生に質問をします。全ての質問に『いいえ』でお答えください」
「ところで俺の朝飯はいつ」
「第一問!」
朝食抜きでアホな茶番に付き合わされるエイジン先生。




