表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ3△ 古武術詐欺師は悪役令嬢を巻き込んで今日もよからぬ事を企む

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

372/556

▼372▲ 寝タバコの不始末で燃え尽きる人生

 エイジン先生が屋敷の応接室まで来てみると、昨晩と同じよれよれコート姿のピーターが、火の点いた葉巻を片手に持ったまま目を閉じ、ソファーに深くもたれる格好で座っていた。


 そんなピーターの眠りを妨げぬ様に、後手でそっとドアを閉めた後、


「火事だあああっ!!」


 いきなり大声で怒鳴るエイジン先生。 


「ああ、こりゃどうも。おはようございます、エイジンさん」


 大声に驚くでもなく、普通に目を開けてゆっくり前に身を乗り出し、テーブルの上の灰皿に葉巻の灰をトントンと落とすピーター。


「その様子だと徹夜か。ご苦労さんなこった」


「若い頃は二晩くらい徹夜しても平気だったんですが、トシですかねえ。どうも体が言う事を聞かなくなってしまって」


 ピーターがそう言いかけた時、バタンと大きな音を立ててドアが開き、続いて血相を変えたメイドが消火器を抱えて部屋に突入して、


「火事はどこですか!?」


 と、勢い込んで尋ねた。


「ああ、すまん。ちょっとしたジョークだ。どこも燃えてないから、安心して持ち場に戻ってくれ」


 騒ぎの火元であるエイジン先生が誤解を解き、


「あの、メイドさん。すいませんが、コーヒー頂けませんかね。ブラックでいいんで。眠気覚まし用に」


 来たついでとばかりに、ピーターがコーヒーを注文する。


「じゃ、俺にも同じやつを頼む」


 便乗するエイジン先生。


「かしこまりました」


 かつがれた事に対する苦情の一つも言わず、消火器を小脇に抱えて部屋を出て行くメイドさんの鑑。


「非常事態なのは分かるが、ちょっとは寝た方がいいぜ」


 非常事態に加担しておきながら、しれっとピーターに進言するエイジン。


「この後、少し眠るつもりです。というのも今朝、ジェーンお嬢様達の安否に関して、少し明るい進展がありまして」


 そう言ってピーターは、自分が座っている横に置いてあった茶色い紙袋の中から、A4の紙を何枚か取り出してエイジンに手渡した。


「今朝速達でレンダ家に送られて来た、差し出し人不明の封書に入っていた手紙と写真のコピーです。まったく同じ物がニールキック家にも送られています」


「写真に写ってるのは、ジェーン嬢とテイタム嬢か?」


 ざっと目を通した後に尋ねるエイジン先生。


「はい。見ての通り、二人共かなりお元気そうで、ご両親も我々捜索員一同もほっとしている所です」


「だがジェーン嬢が持っているフリップと手紙に、何やら脅迫めいた事が書いてあるぞ。これ、誘拐事件じゃないのか?」


「本当に誘拐されたのなら、子供達はこんな楽しそうにしてられませんよ。子供の表情ってのは、実に素直なもんですからねえ。もっと不安そうな顔をしているはずです」


「じゃあ、これはお嬢様達の狂言か」


「ええ、十中八九、自作自演の狂言誘拐でしょうなあ。ただ」


「ただ?」


「あたしはこの二人の他に、誰か共犯者がいるとにらんでます」


 そう言って、意味ありげにエイジンを見るピーター。


「共犯者?」


 顔色一つ変えずにすっとぼける共犯者エイジン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ