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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ3△ 古武術詐欺師は悪役令嬢を巻き込んで今日もよからぬ事を企む

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▼332▲ 半世紀前からバラエティー番組でお馴染みのゲーム

 ある意味ボーナスステージに近いぞんざいな扱いの四天王モンスターを倒したポラン王子は、いよいよ大魔王コッポラの城の内部へと乗り込んだ。


 王子は徘徊するモンスター達を片っ端からレーザー光線で容赦なく殺しまくりながら、さらわれたソーニャ姫を探して城内を進むが、その姿はもはや無差別通り魔犯以外の何者でもない。


 大量虐殺の果てに大魔王の玉座の間までやって来た王子は、そこでついにソーニャ姫を発見した。姫は玉座に座った状態で、ロープで玉座ごとぐるぐる巻きにされて固定されている。


「ポラン王子! これは罠です! こちらに来てはいけません! 罠が起動してしまいます!」


 自分を救いに来たポラン王子に向かって、玉座にぐるぐる巻きにされたまま警告を発するソーニャ姫。


「たとえどんな罠であろうと、あなたをお救いしてみせます、ソーニャ姫!」


「いえ、そうではなく!」


 せっかくの警告を無視してポラン王子がソーニャ姫の方へ一歩踏み出すと、突如、玉座をすっぽり囲む様に青白く光る円筒が現れた。円筒は床からソーニャ姫の頭の少し上位の高さまであるものの、フタはなく、ぽっかりと上が開いている。


「障壁を作ったつもりかもしれませんが、大丈夫です! 上の開いている所から姫を引っ張り出せばいいだけの話です!」


「いえ、そうではなく!」


 ポラン王子がまた一歩ソーニャ姫の方へ踏み出すと、今度は姫の頭上に巨大な赤い風船が現れ、姫を囲む円筒の上に、すぽん、と乗っかり、開いている部分を塞いでしまった。形状的には頭の大きな背の低いこけしをイメージすると分かり易い。


「フタをしたつもりかもしれませんが、大丈夫です! その風船をどかせばいいだけの話です!」


「いえ、そうではなく!」


 ポラン王子がまた一歩ソーニャ姫の方へ踏み出すと、今度は風船が乗っている円筒の縁から、金色に光輝くレールが現れ、水平に弧を描く様にぐんぐん延びて行った。そのままレールは直径三メートル程の円を描いて再び風船が乗っている円筒の縁まで戻り、出発点と連結する形で輪を閉じる。


「このレールに何の意味があるのかさっぱり分かりませんが、大丈夫です! よけて通ればいいだけの話です!」


「いえ、そうではなく!」


 ポラン王子がまた一歩ソーニャ姫の方へ踏み出すと、今度は玉座の間の奥の方からガスマスクを被った白衣の不審者が現れた。その手にはなぜかSLの鉄道模型を持っている。無茶苦茶怪しい。


「大魔王コッポラめ! どんな罠を仕掛けようとも無駄だ! ソーニャ姫は返してもらう!」


 そんな不審者を一目見て、大魔王コッポラと判別出来るポラン王子。


「ふははははは! よくぞここまで来たなポラン王子よ! しかし、そう簡単にソーニャ姫は渡さんぞ!」


 不審者、もとい大魔王コッポラはソーニャ姫が閉じ込められている円筒のそばまで来ると、白衣のポケットから大きな針を取り出し、手にしている鉄道模型の先頭部にそれを装着した。


「うっ、それはまさか!?」


「その『まさか』だ、王子! 今からこの針のついた鉄道模型を空中レールの上で走らせる。鉄道模型が一周すると針が風船を割り、風船の中に入っている白い粉がソーニャ姫にたっぷりと降りかかる仕掛けだ!」


「な、なんて残酷な事を!」


「しかもただの白い粉ではなく、魔法の白い粉だ! この粉を浴びたものは永遠に眠り続け、二度と目を覚ます事はない!」 


「ただの白い粉では飽き足らず、魔法の白い粉だと!? やっていい事と悪い事があるだろう! ダメ、絶対!」


「何とでも言うがいい! ソーニャ姫を救いたくば、鉄道模型が姫の頭上を通過する度にここへ来てタイミングよく風船を持ち上げつつ、それ以外は我と戦え! いくぞ、ポラン王子!」


 回りくどい罠とその運用方法の説明を終えた不審者は、針を装着した鉄道模型をレールの上にセットした。


「待っていてください、ソーニャ姫! 姫をお守りしながら、大魔王コッポラを必ず倒します!」


「やめて、ポラン王子! 私、こわい! 色々な意味で!」


 ソーニャ姫の悲痛な叫びを無視して、ポラン王子は玉座の間の壁に掛かっていた剣を取り、大魔王に向かって突進する。


「ふははははは! さあ、ゲームの始まりだ!」


 大魔王コッポラが白衣の下から剣を取り出して構えると同時に、レールの上の鉄道模型も動き出す。


 王子と大魔王はソーニャ姫から少し離れた所で、しばらく剣と剣で切り結び、


「王子! 助けて! 風船が! 風船が!」


「ああっ! 姫が危ない!」


 鉄道模型がレールを一周して風船を割りそうになる度に、王子はあわてて姫の元へ駆けつけ、大きな風船を持ち上げて鉄道模型を通過させてから、その風船を戻し、再び大魔王との戦いに戻って行く。


 一方で戦いつつ、一方で姫も気遣わねばならない、このハラハラドキドキなシチュエーションに、観客の子供達は興奮しっぱなしで、鉄道模型が一周する度に、


「王子、うしろ、うしろー!」


 と叫びながら、ポラン王子を必死に応援していた。


 そんな熱狂の渦の中、


「何この半世紀前からバラエティー番組でお馴染みのゲーム」


 一人冷静に小声でツッコむエイジン先生。

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