▼288▲ 濃緑色と銀色で顔面を塗装して彼氏をビックリさせるモテカワメイク術
グレタが隼の胴体に主翼と尾翼を取り付けて飛行機っぽく「士」の字に組むと、接着剤が乾くのを待ってからエイジン先生は、
「よし、上半分を塗るぞ。面倒だから下地は塗らなくていい。このまま直に、説明書に書いてある指定色を筆で塗るんだ」
剥きだしのコックピット部にティッシュペーパーを詰めて保護し、まだエンジンが付いていない機首断面の穴に割りばしを突っ込んで持ち手を作ってから、新聞紙の上に本体を直置きにして、まず上部の濃緑色を塗る様、指示を与えた。
「おおざっぱに言うと、上は濃緑色で下は銀色だ。地上に置いてある時は上から見下ろすと森の色に紛れるし、飛んでいる時は下から見上げると空の色に溶け込んで保護色になるらしい」
「敵を騙そうとしてるのね」
「その通り」
「いかにもエイジンの好きそうな発想だわ」
グレタは何か言いたげな目でエイジン先生をじっと見つめる。
「そりゃ戦争ともなれば命が懸かってるからな。軍用機の塗装一つにも色々考えるさ。もっとも、俺の作ってるMiG-15は、ほぼ無塗装の銀一色だが」
「ずいぶん正々堂々としてるじゃない。エイジンの選んだ物にしては」
「プロペラ機相手にジェットエンジンで向かって行く戦闘機が、果たして正々堂々と言えるかな」
「あー、やっぱりエイジンはエイジンね」
ため息をつくグレタ。
「俺の事はどうでもいいから、ともかく塗れ。本当はエアブラシを使った方がきれいに塗れるんだが、準備と後始末が面倒くさい。使い捨ての安い筆で塗った方が遥かに楽だ。それに女は化粧するから、筆の扱いには慣れてるだろ」
「そうね。エイジンの顔もこの筆で濃緑色にメイクアップしてあげたくなって来たわ。ちょっとした森ガールよ」
「じゃあ俺は倉庫からエアブラシ一式を持って来て、それであんたの顔を銀一色にメイクアップしてやろうか。ワンランク上の自分磨き、って趣向で」
二人の言ってる事はあくまでもジョークなので、よい子は絶対真似しないでね!
特に模型用塗料の入ったエアブラシを顔面に向けるのは厳禁。




