▼270▲ ロケット戦闘機の実用性に関する考察
「パイロット狩りにちなんで、今日のスイーツはアイスクリームです」
旧日本兵のコスプレからいつものエプロンドレスに着替えてキッチンにやって来たイングリッドが、テーブルに着いたエイジンの前に、ウエハースを添えてデザートグラスに盛り付けたバニラアイスを差し出した。
「今度はアメリカ海軍の逸話か。海に落ちたパイロットを助けると、空母からそのパイロットの体重分だけアイスがもらえたっていう」
イングリッドのマニアックな趣向にもちゃんとついていけるエイジン先生。
「助けるなら太っている人の方がお得ですね」
「救助する時、パイロットがアイスの塊に見えたりしてな」
「ある意味カニバリズムですか」
「話題を振っておいて何だが、戦争中のその手の話題に深く踏み込むと生々しくなるからやめておこう」
「では話題を転換して、『海外留学中の海軍士官がメイドさんにご奉仕されて骨抜きにされた事案』について語り合いましょうか」
「無茶苦茶懐かしいモンを引っ張り出して来たな。ってか、あれは完全にネタだろ」
「たとえネタであってもメイドさんは素晴らしい、というお話です」
「ま、それはさておき」
「スルーですか」
「あんたは模型作りとか得意そうだな。この前、オモチャのチェーンソーを改造してたろ」
「工作は割と得意な方です。ちなみにあのチェーンソーはその後、エイジン先生のアドバイスに従って強力電動バイブレーターに改造しました」
「俺はそんな意味不明なアドバイスをした覚えは全くないんだが。あんたも何か戦闘機のプラモデルを作ってみるか?」
「そうですね。Me163はありますか?」
「またマニアックな物を。ロケット戦闘機のずんぐりむっくりなフォルムが可愛いのは認めるが」
「デザイン的に、戦闘機の中では一番卵型ローターに改造し易そうですよね」
「もういい。あんたに聞いた俺がバカだった」
「秋水という選択肢もありますが」
「このアイス美味いな」
ウェハースをかじりながらアイスを食べるエイジンの負け。




