▼266▲ 狂人達の宴の実況中継
「結局その後、胸まできっちり洗わされてな。まあ、スポンジで優しくこすっている間は、二人共文句も言わずに静かにしていたが」
「だから、そんな生々しい所まで一々報告して頂かなくても結構です、エイジン先生」
翌朝、倉庫へ呼び出され、エイジンから昨晩のエロ事を事細かく報告されて、真っ赤になって抗議するアラン。
「ただ、時折息が少し荒くなったり、『んっ』とか切なそうに声を漏らしてた」
「言われたそばから、生々しさを増量しないでください!」
「まだこんなのは序の口だ。それからいつもの様に、三人一緒にベッドで全裸で寝る羽目になったんだが」
アランは腰掛けているパイプ椅子の背にもたれてため息をつき、
「もう観念して、とっとと結婚したらどうです?」
投げやりに言い放つ。
「すまない。一緒の館に住んでいるのに中々愛しのアンヌと二人きりになれないアラン君の境遇に配慮が足りなかったな」
「いや、そういう話ではなくて!」
個人的な事情に踏み込まれて、さらに真っ赤になるアラン君。
「だが、そんなアラン君に朗報がある。ベッドの中でグレタ嬢に、『色々あった事だし、アランとアンヌに規定外の特別手当と休暇をあげてはどうだろう?』と提案したら、『そうね。色々あった事だし、あの二人にも一緒の時間が必要ね』と、あっさりOKが出た。いつでも都合のいい日程で構わないそうだから、二人きりで一週間位どこか旅行にでも行ってきたらどうだ?」
アランは目をぱちくりさせて、
「本当にいいんですか? アンヌも?」
と驚いて尋ねる。
「ああ、二人で相談して決めるといい。ガード家のハニトラメイドの一件で、アンヌも少し情緒不安定になってたみたいだから、アラン君が癒してやれ」
「お気遣いありがとうございます、エイジン先生! アンヌも喜ぶと思います!」
アランはパイプ椅子から身を乗り出してエイジンの手を取り、ぶんぶんと上下に振って喜んだ。
「で、ベッドの中の話の続きだが」
「今ならアンヌも丁度暇なので、早速これから相談しに行って来ます! では!」
舞い上がったアラン君は、珍しくエイジン先生の話を無視して倉庫から飛び出して行った。
「やれやれ、恋愛ってのは人を狂わせるねえ」
二人分のパイプ椅子を片付けながら、エイジンは、
「してみると恋愛を主要なテーマとする少女漫画は、狂人達の宴の実況中継みたいなモンだな」
あくまでも個人の感想です。




