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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽おまけ1△ 古武術詐欺師は今日もせっせと悪役令嬢を騙し続ける

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245/556

▼245▲ へらず口の達人

「真に断罪されるべきだったのはグレタさんではなく、エイジンさん、あなたの方だったのです」


 無表情で糾弾するジュディ捜査官に対し、


「いや、その理屈はおかしい」


 そのまじめくさった調子を真似て、無表情で異議を唱えるエイジン先生。


 しかし、ジュディは無表情を崩す事なく話を続ける。


「私は泣きじゃくるグレタさんを何とか落ち着かせ、事情聴取を行いました。エイジンさんをこちらの世界に召喚した件だけでなく、それ以前の事もです」


「この状況を悪用して、グレタ嬢とジェームズ君との関係もハッキリさせておこうとした訳か。二人が婚約者としてどの程度まで仲が進展していたのかは、あんたが一番知りたかった事だもんな」


 一転、おどけた調子になってジュディをおちょくるエイジン。


 痛い所を突かれたのか、ジュディは言葉を詰まらせ、それをごまかす様に紅茶を一口飲んだ。


「だが、聞くまでもないだろう。グレタ嬢とジェームズ君の間には何もねえよ」


「グレタさんから聞いたのですか?」


「聞いたと言うより聞かされた。だが、聞かなくても分かる。もしわずかでも愛があったなら、ジェームズ君をフルボッコにして逆さ吊りには出来ないからな」


「世の中には愛する者を傷付けるタイプもいます」


「ヤンデレか。だがその場合、『ヤン』だけでなく『デレ』がセットになる。グレタ嬢はジェームズ君に対して『デレ』がない」


「二人だけの時に『デレ』ていたとしたら?」


「そもそもあの真面目で優しいジェームズ君が、『デレ』た相手を捨てて他の女に走ると思うか? 彼が婚約破棄を申し出たのは、グレタ嬢との間に愛がない事を互いに承知していたからだ」


「確かにその通りですね。ジェームズさんは『デレ』た相手をあっさり見捨てられるあなたとは違います」


「そこまで『ジェームズお兄ちゃん』の事をよく知ってるはずなのに、グレタ嬢との仲をつい疑ってしまうのは、あんたが嫉妬に狂ってたからだ。寄せる想いが深ければ深い程、寝取られ妄想は激しくなる」


 エイジン先生の失礼な言いがかりに、ジュディはまた心を落ち着かせようとしたのか、紅茶を一口飲んでから、


「グレタさんは『デレ』を内に秘めていたのかもしれませんよ」


「それはあんたの事だろ」


 言葉を詰まらせたジュディは、また紅茶を一口飲んだ。


 ジュディが何か言う度に倍にして投げ返す、割と容赦のないエイジン先生。


 相手の力を利用して逆にダメージを与えるのは、ある意味武術の理想形。

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