▼193▲ 二匹の猿とその飼育員による放送出来ないコント
その後も名家の令嬢グレタと名家のメイドのイングリッドは、全裸で猿化したまま寝室までエイジンにまとわりつき、下半身に巻いていたバスタオルを剥ぎ取った挙句、
「ウキー」
「ウキー」
一緒にベッドに入る様に要求した。猿語で。
「せめて人の言葉を話せ」
「ウキッ?」
「ウキッ?」
とぼけた顔でエイジンの要求を無視する二匹の猿。
「あんたら、いい大人がこんな事してて楽しいか?」
「ウキー!」
「ウキー!」
すごく楽しそうに答える二匹。
「今のあんたらの姿を動画に撮って、明日の朝それを居間の大画面テレビで見せてやろうか」
「キーッ!」
「キーッ!」
この提案が気に入らなかったたらしく、怒りの声を上げた二匹はエイジンに襲い掛かり、ベッドの中にグイグイと押し込んだ後、自分達もその両隣に潜り込んで、
「ウキー」
「ウキー」
何かを要求する様に甘えた声で鳴いた。
「猿山の飼育員になった気分だ」
そう言いながら、エイジンはグレタの頭に手をやり、
「人の言葉を話したら、このままなでるんだが」
「なでて」
まずグレタを猿から人に戻す事に成功する。
そのまましばらくグレタの頭を優しくなでていると、
「ウキー」
反対側で放置されていたイングリッドが、猿語で何かを要求してきた。
「人の言葉で話さないと何も分からないんだが」
そう言って無視するエイジンに対し、
「バナナをください」
イングリッドもようやく猿化を解く。
「まだ猿ネタ引っ張るのか。冷蔵庫から取って来ればいいんだな?」
「いえ、エイジン先生のバナ」
「やかましい」
言い終わる前に、ペチ、とイングリッドの額を軽く叩くエイジン先生。
「グレタお嬢様は頭なでなでで、私は額ペチですか」
「しょうもないボケをかました後、ツッコミが入る代わりに、頭を優しくなでられたらどんな気分だ?」
「死にたくなりますね」
「そういう事だ」
エイジンはそう言って、イングリッドの頭も優しくなで始めた。