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古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む  作者: 真宵 駆
▽本編△ 古武術詐欺師に騙された悪役令嬢は今日も無意味な修行に励む
18/554

▼18▲ メイドを追い出したいという衝動

 薄茶色の寝巻用作務衣に着替えたエイジン先生は、ある一つの事実に気付く。


「よく考えたら、この小屋の寝室にはベッドが一つしかないじゃないか。今晩はもういいから、屋敷の自分の部屋に戻って寝てくれ」


 これでうるさいオカン、もといメイドを追い払ういい口実が出来た、とばかりに喜々として言うエイジンに対し、イングリッドは、


「私はこのソファーで寝ますから、ご心配は無用です」


 人をダメにしそうな、かなり座り心地と寝心地のよさげなソファーを指差して、その提案を却下した。


 軽く、ちっ、と舌打ちするエイジン。


「こっちが客とは言え、女の人をソファーに寝かせておいて俺だけベッドに寝るのも、何か落ち着かないんだが」


「では、そちらのベッドで私も一緒に寝ます」


「余計落ち着かんわ。俺がソファーで寝るから、あんたはベッドで寝てくれ」


「どうしても、と言うのであれば」


「どうしても、だ」


「どうしても、私がベッドで寝た残り香を後で堪能したいと言うのであれば、そうさせて頂きます」


「どんな変態だ俺は。ああ、もう分かったよ。俺がベッド、あんたがソファーでいい」


「かしこまりました」


 またもイングリッドに押し切られてしまうエイジン。


「明日は五時に起きるから、俺はもう寝る。七時にグレタ嬢と修行を開始する予定になってるんだ」


「では、朝食は六時でよろしいでしょうか」


「ああ」


 抗議しても無駄だと悟ったのか、エイジンはなげやりな返事をして、寝室に入るとそのままベッドにもぐりこみ、すぐ眠りに落ちた。


 翌早朝、五時にセットしておいた目覚まし時計が鳴る直前に目覚めたエイジンが、寝ぼけまなこで寝室を出ると、パジャマからエプロンドレスに着替えている途中で、ノーブラでパンツ一丁のイングリッドに遭遇し、無言で回れ右して寝室に戻ってから、


「もう言っても遅いけど、着替えは、バスルームの脱衣所でやってくれないか」


 と、ドア越しに抗議した。


「失礼しました。昨晩の様な襲撃はしませんから、どうか出て来てください、エイジン先生」


「着替え終わったのか」


「いいえ」


「着替え終わったら教えてくれ」


 武闘派でオカンでボケで恥じらいのないメイドと一つ屋根の下、無駄に神経をすり減らすエイジンだった。

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