▼178▲ 軽いイタズラと恐妻家
全裸のグレタ、エイジン、イングリッドが、再びベッドに川の字に横たわり、女二人が男一人を左右から糾弾する形が出来上がる。
「私の時もそうだったけど、どうして急に怖い事するの、エイジンは!」
主にグレタに叱られ、
「ああ、悪かったよ」
特に反論せず、素直に謝るエイジン。
「イングリッドがPPAPになったらどうするのよ!」
「PTSDな」
「冷静にツッコまないで!」
怒鳴りつつ少し赤くなるグレタ。
その後エイジンは、グレタとイングリッドに要求されるまま、それぞれの頭を同時に優しく撫で続け、やがて三人の誰からともなく眠りに落ちた。
一悶着あったにも拘わらず、翌朝になるとグレタとイングリッドはすっかり機嫌が直っており、三人で朝食をとった後、イングリッドに見送られ、作務衣姿のエイジン先生とその腕を取って寄り添うジャージ姿のグレタが一緒に稽古場に向かう。
「――ってな事があってな。結構大変だった」
「だから、わざわざ呼び出して、そんな際どい話を微に入り細を穿つ様に私に報告しないでください」
その日の夕方、グレタのトレーニングをアンヌに引き継いで稽古場を出たエイジンは、例の倉庫にアランを呼び出し、昨晩のエロ騒動の顛末を無理矢理聞かせてその顔を赤くさせるノルマを達成した。
「で、アラン君は、あの二人が俺を罠に嵌めようとしていた事を知っていたんだな?」
「そ、それはその、口止めされてまして。すみません。でも、罠と言う程でもない軽いイタズラですし、そんなにひどい話とも思わなかったものですから」
「軽いイタズラで俺は結婚させられそうになったのかよ」
「でもイタズラと露見した後で、あのお二人と一緒に入浴したり一緒に寝たりしてる訳ですし、エイジン先生も実はまんざらでもないんじゃないですか? 普通、あんな美女二人に言い寄られたらウハウハでしょう」
「その言葉をアンヌにそのまま伝えてやろうか。『アラン君が「あんな美女二人に言い寄られたらウハウハ」だと言ってた』って」
「すみません、つい、調子に乗りました」
恐妻家が板について来たアランだった。