▼177▲ 海底で巨大な貝に足を挟まれて身動きが取れなくなったダイバー
大きなベッドの真ん中に全裸で横たわっている所へ、全裸の美女二人に両脇から抱きつかれるという、普通ならウハウハ桃源郷状態のエイジン先生だが、その表情はどことなく疲れている。
「エイジン先生。ここまで来たら、もうやる事は分かってますね。早く私達のナカをエイジン先生のカタチに変えてください」
「や、やさしく、ゆっくりしなさいよ! そうすれば大丈夫だから……たぶん」
真顔でボケる系のイングリッドと赤面混乱逆上系のグレタに言い寄られ、
「あんた達は一体何を言ってるんだ」
そう答えるのがやっとのエイジン。
「この期に及んでとぼけるのはナシです。難聴系主人公など、エイジン先生には一番縁遠いキャラでしょう」
イングリッドがそう言ってエイジンの手を取り、自分の胸にぎゅっと押し当てる。
あえてその手を引っ込めようとせず、エイジンは、
「そこに至る過程をすっ飛ばして結論だけ押し付けられたら、誰でも、『え、なんだって?』って言いたくなるわ。そもそもこういう事は、それなりに段階を踏むべきじゃないのか」
と反論。
「下を大きく固くしながら、そんな事を真面目に言われましても」
「小さく柔らかくしたかったら、とりあえず離れろ」
「離れる以外にも小さく柔らかくする方法はありますが。私のナカで」
「ナカで小さく柔らかくなったら、着けているモノが外れてえらい事になるが」
「その辺のタイミングの調整は殿方の仕事です。外れる前にすぐ抜いてください」
具体的に何を、とは言わないものの、かなり際どいセクハラ合戦がイングリッドとエイジンの間に勃発し、それを間近で聞かされて真っ赤になっているグレタはさらに混乱の度合いを高め、漫画的に表現するなら両目が渦巻き状態。
「グレタお嬢様も私も、真剣な思いでここまでしているのです。慣れないので突飛な行動になってしまっているのは認めますが、取り澄ましているだけでは色恋など出来ません。無様でもみっともなくても恥ずかしくても前に進まなければ、何も変えられないのです」
「こんな状況じゃなければすごくいい事言ってるんだがな。目的に執着するあまり、手段を思いっきり間違えてたら意味ねえだろ」
エイジンはイングリッドにそう言ってから、混乱中のグレタに向かって、
「グレタ、ちょっと離れてくれ」
自由になった手で枕元に置いてあった正方形の何かを手に取り、それをイングリッドに見せてから、
「今からこれを着けるから、手を放せ」
その大きな胸に押し当てられていた手も引っ込めて、その正方形の包装を破ってピンクの薄いゴム製の何かを取り出すと、それを布団の中に入れ、下で何やらもぞもぞとやっていたが、
「着けたぞ。これでいいんだろ」
イングリッドの上にのしかかり、ぎゅっ、と抱き締めた後、右手で相手の太ももを撫で始めた。
「ひっ!?」
「もっと力を抜いて、足を開いてくれ」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「最後までやるからな」
「い、嫌っ!」
思わず両手でエイジンの右手首を掴んでその動きを止めるイングリッド。
「離してくれないと、最後まで出来ないんだが」
「ま、待ってください! こ、心の準備を!」
「分かった。待つから、手を離せ」
イングリッドが手を離すと、エイジンは太ももに右手を乗せたまま、
「何分待てばいい? 五分か、十分か?」
「い、一分あれば十分です」
「じゃ、準備出来たら言ってくれ」
それから一分が過ぎたが、イングリッドは息遣いも荒いまま、表情にも余裕がなく、とても準備が出来たとは思えない。
「な、分かっただろ。無理すんな。この辺でやめておこうぜ」
「準備出来ました。つ、続きをどうぞ」
余裕のない表情のまま、イングリッドが意地を張る。
「じゃあ、足をもっと開いてくれ」
顔を横に向け目をそらしつつ、無言で足を開くイングリッド。
エイジンは太ももに置いてあった手をさらに上の方、足の付け根へと滑らせ――
「いやっ! やめて! やめてください! 離して! そこは触らないで!」
イングリッドが大声で叫ぶと、その悲痛な声で我に返ったグレタが、ガバ、と起き上がってエイジンの背中から抱きつき、
「もうやめてあげて、エイジン! イングリッドが嫌がってるじゃない!」
真っ青になってイングリッドから引き離そうとするが、
「違う! 俺は離そうとしてるのに、イングリッドが足を急に閉じて俺の手をがっちりロックしてるんだ! 落ち着け、イングリッド!」
万力のごとく両の太ももをぴったり閉じられ、その付け根の辺りで右手を挟まれたまま身動きが取れなくなったエイジンだったが、何とかイングリッドを落ち着かせて脱出に成功し、
「な、無理する事はないんだ。突飛な行動は自分を傷つけるぞ」
努めて優しい口調で宥めると、イングリッドは涙目で顔を赤くしたまま、何とか表情を整えて、
「今日の所はこの位で勘弁して差し上げます」
と気丈に言い返す。
「うん、あんたのそういう所は嫌いじゃない」
呆れつつ感心するエイジン先生。